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女王が好む、英国ご自慢のチーズ!

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女王が好む、英国ご自慢のチーズ!

言い伝えも、ちょいとごちゃまぜになってはいるが、こんなおハナシから、今夜ははじめてみようかな。

「男たちには、チーズは語れない」
というくらいその昔、イギリスでのチーズづくりは主婦の大事な仕事であった。そんな1700~1720年頃のこと。

X’masにレスターシャーの農婦が、ひょんなことから出来上っがったブルーチーズを、ある村の「ベル・イン」という旅籠に嫁いだ妹にプレゼントしたというのが、このチーズのはじまりだそうな。

そして、その村の名前から、そのチーズは『スティルトン』と呼ばれるようになったというのが一般的な伝説であって、よく知られている。

ところが、この農婦の名前がエリザベス・スカーブラウじゃないかといわれ、ちょいとハナシがややこしくなってくる。

同年代、レスターシャーにある古くからの貴族館に、近隣の農婦である彼女が、家政婦として働きはじめ、この館でつくられていたちょいと名の知れたチーズの管理を任された。

が、ひょんなことから出来上がったブルーチーズが評判になった。その彼女の娘である豪農に嫁いだ妹が、母のチーズづくりを継承し、また姉である上の娘が単なる田舎の旅籠じゃなく、由緒正しい旅館・「ベル・イン」に嫁いだということなのらしいのだが・・・

まあ、どちらにしてもスティルトン村のあるハンティントンシャーでは、スティルトンはつくられていなかったし、現在もそれに変わりはない。村の名前である「スティルトン」っていうチーズ名だけが、一人歩きをしているワケだ。

生産地区は、主にレスターシャー。そして、ダービーシャーとノッチンガムシャーの3州だけで、もちろん伝統的な製法でつくられている。

ブリティッシュ・フリージャン種中心の乳牛の搾乳場は6ヶ所。そのほとんどが、ノッティガムシャーと、レスターシャーとの境界にあって、ベルボア峡谷に本拠を持っている。

1936年、「スティルトン・チーズメーカー・アソシエイション」が設立されると、トレード・マークが決められ、ついにハンティントンシャーははじきだされた格好になった。

「スティルトン」は、厳格な法律の下で管理されるようになったのだ。正式名称は、『ブルー・スティルトン』。DOP(原産地統制保護)チーズである。

直径;20cm、高さ;25~30cm、重さは5~8kgの円筒形。同じブルーチーズの「ロックフォール」より、シャープさが少なく、「ゴルゴンゾーラ」よりも、クリーミーさには欠ける。

しかし、さすがにイギリスの名品といわれるだけに、味わいはバターのようにまったりとした口当たりと、深いコク。優しい甘みがある。

青カビ菌は低温殺菌された牛乳に、最初に混入し、また塩を混ぜるのもカードの段階だ。四角にととのえられたカードを裏返しにしたり、切り分け重ねるなどして、ホエーを切っていく。

その後、2cm角のサイコロ状にし、加塩し、型枠に入れ、1週間ほどゆっくりと水分を抜いていくチェダリングの工程を経る。この製法だと、組織が固く締まり緻密にはなるが、もろく崩れやすく、また割れやすくなる。

プレスはしない。そして、10日にわたって毎日一度、型枠に入れたチーズを反転させながら型を整えていく。次いで、型を抜くと、その隙間すきまにはというと、ぼつぼつと青カビが発育しているのが見える。

青カビは熟成とともに、内側から外へと増殖。その青カビが、脂肪分を分解して、あの独特の匂いとか、ピリッとした刺激を生む。

熟成は、6~9ヶ月。外皮は、自然にできた細やかではあるが、でこぼこのある縞模様。隙間というか、裂け目が青カビの繁殖に必要な空気穴になる。

それから、ペースト状になったスティルトンを、その外皮に塗りつけていく。枯れ葉のようなチーズ表面に、まさに白雪が積もったような状態なったらOKだ。中身はアイボリー色、マーブル状に青カビが広がっている。



現女王・エリザベス2世、大のお気に入りのスティルトンは、ちょいと変わった食べ方がある。17世紀、貴族たちは、対仏戦争で大好きなクラレットが入ってこなくなると、自分たちの愛国心を喧伝するためかどうか、手近なポート・ワインを代用した。それも、おもしろい方法で。

スティルトンの上部をスプーンでこそぎ、くり抜き、そこにポートをそそぎこんで、スプーンでかきまぜ、すくって食べるという荒業だ。まことに、おいしいものには目のない紳士たちの遊び心に敬服。

ワインはポート、クリーム・シェリー、定番ともいえる甘口の白もおすすめだ。それと、スコッチも忘れてはならない。

香ばしい全粒粉のパン、ライ麦のパンとともに。それと、チーズ全般にいえることだが、とりわけ青カビ・チーズは野菜・果物とは相性もいい。

味わい方はご随意にといいたいところだが、スライスしたバゲットやクラッカーにスティルトンをぬり、ちょいとはちみつを垂らしてみる、というのはどうだろう。

サンドウィッチにカットしてはさみこんだり、お肉にのっけたり、パスタのソースに。固くなりすぎた外皮はすりおろして、グラタン・パスタソースなどの調理用にどうぞ。

甘い物好きのイギリス人は、削って、ビスケットにのせて食べる。また、アフターヌーン・ティー時のおつまみとしても最適。やはり、そのまま食べるのが、手っ取り早い。

ヴァリエイションは多彩だ。通常のものよりも強いコクと、シャープさのある通向きともいえるスティルトン。それに、X’mas時の限定発売・「スティルトン・ジャー」は、ポットに入れたスティルトン。カルバドス、ポート、ウイスキー入りも。

もう一つ、スティルトンには、絶品ともいえるデザート・タイプがある。当然、生地そのものは「ブルー・スティルトン」だが、違うところは非熟成だということ。

ホワイト・スティルトン」が、それだ。真っ白でほのかな酸味があって、さっぱりとした味わい。特有の青カビ臭はしないものの、ボロボロと崩れやすい組織は変わらない。

ストロベリー、ブルーベリーの果肉、またレモンピールなどを混ぜ込んだものも、なかなかおいしい。まさしく、デザート・チーズのお手本のようなチーズである。ほかにも、マンゴー、ピーチ入りもあって、見た目も味わいも楽しい。

参考;『チーズ図鑑』(文芸春秋編、刊)

♪ R.シュトラウスの管弦楽曲集を、聴きながら書いております。♪

他人によく思われなかったシュトラウスだが、こと音楽に関しては、あまりにも純粋で、真摯である。シュトラウスといえば、ドイツではモーツアルトの再来かといわれるほど、オペラは名作ぞろい。

それがあってかどうか、シュトラウスは人一倍、指揮者としても、むろん作曲家としても、モーツアルトに御執心。今日あるモーツアルトは、シュトラウスのおかげ? オペラもいいが、こちらも傑作。

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