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ボーフォール、旨味は草花がつくる? 

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ボーフォール、旨味は草花がつくる? 

子どもたちだって、おいしいチーズってちゃんと分かっている。かのブリア・サヴァランいうところの「チーズ界のプリンス」である『ボーフォール』は大人気だ。でも、これって、フランスでのハナシなんですよね。

チーズ名は19世紀中ごろと新しいが、古代ローマ時代からつくられていたというから、起源は古い。

「グリュイエール・ド・ボーフォール」。フランスでいうところのグリュイエールとは、スイスとは違って、加熱して圧搾した大型のチーズのことをいう。

3000mもの山小屋で寝泊りして生産すると言われる「アポンダンス」、庶民的な「コンテ」とともに、フランスAOC・3大山のチーズの一つである。そのなかでも、気品のある香りはグンを抜き、王さまと称する。

フランスはスイス国境近くの山岳地帯のサヴォワ地方。ボーフォールは村名。直径:35~75cm。高さ:11~16cm。重さ:20~70kgの円盤状の大型のハード・タイプのチーズである。

チーズの表面は平らではあるが、側面が電車の車輪のように、真ん中あたりがヘコんでいる。それというのも、出来上がったチーズをそのくぼみに縄を巻きつけ、馬とかロバに背負わせて、山から下ろした名残が今も残っている。

点在する各山の小屋から集荷され、検査されたミルクを銅製の大なべに入れ、33℃に温め、昔ながらの方法で子牛から抽出したレンネットを添加。その凝固したカードをカット用ワイヤーで米粒大の大きさにカットし、かき混ぜながら、大なべ内の温度を54℃まで、ゆっくりと加熱。

細かくなったカードはホエーをはき出し、しっかりと固まり、濃縮されていく。その作業は、およそ2時間ほどで終了し、ブナ材の伝統的な容器である丸い型枠にカードを詰める作業へと移る。重石をのせ、圧搾。布を変えたり、型枠を締めなおしたりして、一日塩水の入った大きな容器に漬け込む。

次いで、熟成室では、外皮がネバネバの状態のチーズに塩をすりこみ、モルジュ液を混ぜた塩水を浸した布で拭いたり、こすったりの繰り返し。機械化されているとはいえ、まだまだ工程の大部分は手作業だ。

それでも、工場制、フェルミエ製、そして山小屋(シャレ)製と3タイプあり、味わいも違う。

最低4ヶ月熟成。中身はしなやかで、しっとり豊かな風味。6~9ヶ月の追加熟成で、ナッツの香りとともに、上品な甘さと、コク。花の香りも。

アルプスの春は遅い。それに、夏も短い。

アポンダンス種の乳牛も飼育しているが、主にインド原産の小ぶりで、温度変化にも耐え、足腰の強い山の牛であるタリーヌ種のミルクを使用。タリーヌ種の牛は、ボーフォールづくりには欠かせない。冬は干し草を、夏はハーブの混ざった牧草を食べながら放牧させている。

3つのタイプがある。「ボーフォール」、「ボーフォール・デテ」、そして「ボーフォール・ダルバージュ」だ。

その違いは、いかにも山のチーズらしく標高差で決定する。裾野から高く上れば上るほど、味わいも深く、香りもあくまで高貴で上品。それはまた、それぞれの季節の違いをも実感するというワケ。ということは、そうお値段のほうも標高が高くなれば、希少価値も手伝って高価になるってことだ。

最上の『ボーフォール』である「アルパージュ」を紹介する前に、まずは、「エテ」から。

「エテ」は、夏のチーズともいわれ、6月から10月末までの放牧中のミルクで生産したチーズであり、栄養価も高く、味わいも深い。短い夏の太陽の下で、自然の高山植物、ハーブ、カロチンいっぱいの花々を食べた牛のミルクは、香り豊かで、良質でもある。冬、干し草で育まれた牧牛からつくられたチーズはやや白っぽいが、夏のチーズは濃いクリーム色。

さて、「アルパージュ」だが、「エテ」の放牧中のチーズではあるが、なお一層高く、1500~2000m以上の山々で放牧され、それも一群れだけのミルクでつくられたものをいう。濃いクリーム色、そして豊かなフレーヴァーをもつチーズである。

いわゆる、「エテ」もそうだが、とりわけ”高地牧場産チーズ”とよばれ、珍重されている。「エテ」の場合は、混合のミルクだ。

ちなみに、通常上記以外の期間は、朝・夕と搾ったミルクをまとめて、1日1回の作業だが、持ち味を損なわないため、”朝”と、”夕”との搾乳後、ただちにチーズを生産するという、きわめてぜいたくなチーズでもある。危険を冒してまで作ったチーズは、ミルクのコクと、上品でやさしいハチミツのかおりがする。

ワイン全般、OKだ。辛口白、それもサヴォワの白だと、文句なし。ちょいと気取って、「アルバージュ」を食後のデザートとして、食べてみるのもいい。クルミ入りとかドライ・フルーツ入りのパン、それとパン・ド・カンパーニュなどとともに。

薄くカットして、ナッツ類と。また、グラタン発祥の地らしく、焼きチーズもいいかも。溶かして、ジャガイモと。ボーフォールがメインのチーズ・フォンデュも、試してみてはいかがかな。

参考;『チーズ図鑑』(文芸春秋編、刊)

♪ これは、ショパンのピアノ協奏曲? 今夜は、ちょいと乙女チックにスクリャービンのピアノ協奏曲 嬰ヘ短調。スクリャービンといえば、ピアノ・ソナタ。その上、卓越したピアニストでもあった。アシュケナージ、マゼール/ロンドン響。若かりしときの作品。アシュケナージも、若い。とりわけ、彼はスクリャービンには、思い入れがたっぷり。 

それが爆発するのが、スクリャービン最後の交響曲、第5番”プロメテウス”。といっても、これは実質的には、協奏曲。音だけじゃなく、色と、光をもあやつって音楽を創造するという何とも、神秘的。まあ、そんな思想にはまっていた後期スクリャービンの作品だ。♪

(注; 再投稿 )

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