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未来を開く酒、ドン・ペリニヨン(2)

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ルイ15世の治世、自国フランス・ワイン製造の産業の重要性に気づき、ランスに瓶詰めされたシャンパンを独占的に販売する特権を与えた。

1729年、ニコラ・ルイナールが記録上最古のシャンパン・ハウスを設立。遅れること、1743年、クロード・モエが「モエ・エ・シャンドン」を設立した。

その「モエ・エ・シャンドン社」の出発点は、今から270年以上もむかし、エペルネの小さなワイナリーだった。1743年、クロード・モエがシャンパーニュ地方からパリまで船積みワインにしたのがはじまりである。

かれは、ワインの目利きであるのと同時に、頭の切れる商人でもあった。そんなかれには、壮大な目標があった。それは、シャンパンを最高のワインにすること。そして、モエを最高のシャンパンに育て上げることだった。

かれの尽力により、フランス王宮へも献上され、当時のルイ15世の舌をもとりこにした。フランス王室御用達となったのだ。それが機縁となって、モエ・エ・シャンドンの名はまたたく間に広まり、ドイツ、スペイン、ロシアの王室でも大流行した。

ルイ15世の愛妾だったかのポンパドゥール夫人も、モエ・エ・シャンドンをこよなく愛した一人だった。ルイ15世と過ごす際には、数百本にも及ぶモエ・エ・シャンドンを城に運ばせた、という記録が残っている。彼女によって、モエ・ エ・シャンドンはヴェルサイユの王侯貴族に広められ、華やかな社交界にふさわしいシャンパンという評価を得た。

そんな“モエを、セレブのシンボルにする”というクロード・モエの志は、孫のジャン・レミー・モエにも引き継がれた。そのかれが、娘婿のピエール・ガブリエル・シャンドンと、息子のヴィクトール・モエに家督を譲り、ここに「モエ・エ・シャンドン社」が誕生した。

先駆的なビジョンの持ち主だったジャン・レミー・モエは、ワインづくりのアイデアや、技術を積極的に取り入れていった。さらに、一地方のワインにすぎないモエの価値を、国際的なラグジュアリーブランドへ引き上げる取り組みも進めた。

このとき、かれは驚くべき決断を下した。それは、シャンパン以外のワインの製造を中止し、すべての努力をシャンパンづくりに注ぎ込むというもの。この大胆な転換こそ、モエ・エ・シャンドンの価値をゆるぎないものにする、大きな一歩だったのだ。

18世紀初頭にクロード・モエが購入した地所をもとに、後にエペルネの市長となったかれが建てたのが、トリアノン、オランジュリー、シャトード・サランといった豪華で壮麗な邸宅群だった。

ここで過去2世紀にわたり、皇帝・ナポレオンや、偉大な作曲家・ワーグナーをはじめ、世界中の有名ゲストたちがもてなされた。とりわけ、モエ家と旧知の仲だったナポレオン1世は、かれのもとを幾度となく訪れ、シャンパンで戦勝を祝うほどの熱心な愛好家だった。

その親交の証として、誕生以来人気を博していたメゾンの旗艦・シャンパンに、「アンペリアル=皇帝」の名がつけられた。「モエ・エ・シャンドン ブリュット アンペリアル」のラベルが貼られた最初の50本は、ナポレオン生誕100周年にあたる年に初めて出荷された。

さて、ヴィンテージ・シャンパン「ドン・ペリニヨン」は、年によって、セパージュに1、2%の差異はあるが、基本的にはシャルドネと、ピノ・ノワールが50%ずつでつくられる。シャルドネは優雅さや新鮮さを、ピノ・ノワールは力強さをシャンパーニュに与えるが、熟成ポテンシャルの少ないピノ・ムニエは使用していない。

なぜなら、「ドン・ペリニヨン」の原料ブドウの条件として最も大事にしていることは熟成ポテンシャルだからだ。最低でも30年は熟成可能とおもわれる、ポテンシャルの高いブドウしか使用しないのだ。

現在の「ドン・ペリニヨン」のラインナップのうち、最も熟成期間の短いドン・ペリニヨン・ヴィンテージ(P1)ですら、最低9年の熟成期間を経てからリリースされるので、「ドン ペリニヨン」の熟成へのこだわりはただものではない。この熟成こそが、「ドン・ペリニヨン」の独自性に磨きをかけるのだ。

2000年から、オリジナルの熟成サイクルを導入した。エチケットに表示されている「P2」は、第二の熟成ピークを迎えたことを意味する。そもそも、「ドン・ペリニヨン」は3回の熟成ピークを迎えるようつくられていて、最初のリリースは1度目の熟成ピークを迎えたものになる。(注;「P2」の「P」は熟成を意味するプレニチュード(Plenitude)の頭文字)

「ドン・ペリニヨン」は、年によって個性も、むろん異なる。たとえば、2008年は10年以上の熟成が必要だったから、2009年よりも後からのリリースとなった。つまり、「ドン・ペリニヨン」はどの段階のプレニチュードでも、リリースされた時が飲み頃なのだ。

さらに、「P2」は16年以上の熟成期間を要し、「P3」は通常25年以上熟成させるそうだ。残念ながら、「P3」はフランス本国のメゾンでのみで販売されており、一般販売は今のところしないという。

また、「P1」と、「P2」では「P2」の方が良いという意味ではなく、スタイルの違いなのだ。「P1」はアペリティフにぴったりな洗練されたフレッシュな味わい。スタイルの違いとはいえ、「P2」は「P1」より高度な緻密さを信条としているともいう。軽快にして濃密、奥行きともに広がりをあますところなく表現している。

■■飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は楽しくほどほどに。

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