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最強タッグ、エスプレッソと、グラッパ! (3)

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■ WINE & DINE; ”la grappa(グラッパ)”;「人生を大切にする人は、適量を飲み、良きものを飲む」

食後酒として親しまれているグラッパは、イタリアの歴史が生んだ産物だ。北イタリアでつくられているものが多く、とりわけトレンティーノ・アルト・アディジェ州のものが有名。
「単なるアルコールの高い食後酒ではなく、余計なものを削ぎ落とした、ブドウの一番美しい部分を引き出した蒸留酒」
でもある。昔から、
「ワインといえば貴族、しぼりカスからつくるグラッパ」
といえば、貧乏人が生計を立てる手段だった。ワインを飲むことができる貴族たちは、このような飲み物を下等な飲みもの、と笑っていた。

そんな貴族や、地主などの富裕層は、ワインから蒸留酒をつくっていた。それを見ていた貧乏人はヴィナッチェに水をくわえて、再発酵した飲みものを、ヴィネッロと呼び、そのヴィネッロから蒸留酒をつくるようになった。

残念ながら、当時の蒸留技術は、未熟なものであった。まだ精留技術などあまり知られていないため、ヴィネッロからつくる蒸留酒は、不純物が多く、とてもおいしいとはいえない代物であった。

もともと、ワインをつくった後のしぼりカスは、ブドウ畑の肥料として処理していた。しかしながら、トスカーナ、ヴェネト、それにピエモンテなどでは、13世紀ごろには、ブドウの皮をゆでた飲みものを、冬の寒い日などに飲んでいたようだ。

およそ200年ぐらい前のことだ。モンテ・グラッパの住民は、酒税があまりにも高いため、ヤミ蒸留酒をつくって、こっそり販売していた。そんななごりか、小さな蒸留所が、ここバッサーノには多い。

そのグラッパの生産地としても名高いヴェネト州にある町、正式名称をバッサーノ・デル・グラッパ。町の北部に Monte Grappa (グラッパ山)があって、その下(bassare)から由来している。そのバッサーノの町の真んなかを、アルプスを源流とするブレンタ川が流れている。その川に面した家々の壁面には、ナポレオン戦争時の弾痕が、いまもなお生々しく残っている。

その川上には、アルピーニ橋が架かっている。かのルネサンス時代の天才建築家、アンドレア・パッラーディオが設計した、ちょいと珍しい屋根のある木造の橋だ。1569年に建てられたが、その後戦災などで、4度も再建したとも。橋からは、正面にはグラッパ山、振り返ると、入り口近くに銅製の蒸留器をかたどった蒸留会社・ポーリのグラッパ博物館がある。

また、その橋のたもとには、老舗蒸留会社・ナルディーニが運営するバールもある。そのナルディーニのグラッパには、中世以来、「アックア・ヴィーテ」と、ラベルに印刷されている。

看板商品は、アマローネのヴィナッチェを使ったアマローネ・バリック。だが、ルタや、チェードロなど薬草や、果物を漬け込んだものもあって、そもそもは、薬草酒をつくるためのアルコールでもあったということだ。

さて、その蒸留技術は、紀元前4000年ごろには古代エジプト、紀元前3500年にはメソポタミアにおいて、薬草から、エキスの抽出などのために存在していたといわれている。

蒸留器であるアランビックは、アラビア人が発明したもの。しかしながら、それはブドウのしぼりカスではなく、薬などの抽出のためか、野菜などを使っていた。641年ごろのことだ。

イタリアにはローマ帝国末期に、錬金術師によって、ギリシャから伝わっていたとされている。その後、ナポリ人が広め、それがトレンティーノ・アルト・アディジェ、フリウリ、ロンバルディア、ピエモンテ、ヴェネトなど各地に広がっていった。

その蒸留技術のアルコールへの応用は、11世紀半ばごろ。南ヨーロッパから発生し、シチリアで、はじめてワインから、アルコールを蒸留したといわれている。これを、「acqua della vita(生命の水)」、と呼んだ。

このころには、ブドウのしぼりカスや、そのしぼりカスに水を加えたヴィネッロを蒸留したお酒は、ヨーロッパでも広くつくられていたようだ。

17世紀ごろになると、
「ポルタの“7つの頭のヒュドラ」
と呼ばれる蒸留器の発明により、はじめて分留、および精留がでできるようになった。それから、18~19世紀にかけて、それまでの蒸留業者の一部が、グラッパ蒸留会社として独立。

そして1813年、バッリョーニにより、グラッパがイタリア独自の飲みものとして決定づける蒸留器が発明された。この新しい蒸留器の登場により、ヴィナッチャそのものを、直接蒸留することができるようになった。それまでは、しぼりカスからつくるヴィネッロを蒸留していた。アルコール度数は、80度以上。それを精製水で、50度前後に割る。

こうして、グラッパは独自の蒸留法を確立、発展した。20世紀初頭には、移動式蒸留業者を含め、およそ10万軒にもおよぶグラッパ蒸留業者がいたといわれている。

1970年代に入り、コニャックや、ウィスキーなどが食後酒として飲まれるようになると、グラッパもまた、食後酒としての立場を確立していく。

そして、庶民の飲み物であったグラッパの品質に大きな影響を与えたのが、ノニーノ社が、1973年にリリースしたモノヴィティーニョだった。単一のブドウ品種のしぼりカスからつくったグラッパだ。

それまでは、いくつかのブドウ品種が混じったしぼりカスでつくられていたグラッパが、ブドウ品種ごとにつくられることになり、これによってしぼりカスそのものも、おおいに品質管理、改善されることとなった。

この新しい流れは、すぐにほかのメーカーにも伝わり、ヴェネチアン・グラスの装飾品的なボトル使用などと相まって、グラッパの価値もグンと向上。と、同時に、日本をはじめ世界的にイタリアン・レストランの増加もあって、ワールド・ワイドな食後酒として広がりはじめた。

近年、グラッパ・メーカーも、消費者のニーズに合わせて、さらに上質の高級・有名ワインのしぼりカスからつくるグラッパや、長期樽熟成のグラッパなど、高級化、および多様化が進んでいる。

それでも、グラッパの多くは、熟成させず、無色透明が一般的ではある。そして、そのグラッパは、「日本グラッパ研究会」によると、以下のように、7つに分類されるようだ。

★ Grappa giovane / bianca ;蒸留後、ガラス、またはステンレスタンクにて最低6ヶ月熟成させたグラッパ。無色透明で、蒸留したままと、ほぼ同じ味わい。このタイプが多い。それに、giovane より 、bianca のラベル表示が多い。

★ Grappa affinata in legno ;蒸留後、木樽にて、6~12ヶ月熟成させたグラッパ。それと、★ Grappa vecchia / invecchiata ;蒸留後、木樽にて12~18ヶ月熟成させたグラッパ。ともに、このラベル表示もめったに見ることがない。

★ Grappa riserva / stravecchia ;蒸留後、木樽にて18ヶ月以上熟成させたグラッパ。riserva も 、stravecchia も、どちらもよくラベル表示で使用される。15年や、20年熟成のグラッパもある。

★ Grappa aromatica ;アロマティックな葡萄品種しぼりカスからつくったグラッパ。モスカート、ゲヴルツトラミネールなど。ほかに、ハーフ・アロマティックな品種として、ミュラー・トゥルガウ、プロセッコ、ソーヴィニヨン・ブラン、マルヴァジアなど。

★ Grappa aromattizato ;ハーブやフルーツなどの無害な植物成分による、香りづけや、色づけされたグラッパ。

★ Grappa monovitigno / univitigno / di vitigno ;単一葡萄品種のしぼりカスを85%以上使用してつくられたグラッパ。ラベルに、その品種名を表記できる。また、有名な銘柄ワインのしぼりカスのグラッパも、このカテゴリーに入るようになった。



さらには、製造過程において、その加糖についてだが、そのアルコール含有量に対して2%までは、加糖が認められている。だが、加糖は、グラッパ本来の味を変えてしまうとして禁止している蒸留所から、少しだけ加糖して、グラッパに丸みをあたえ、飲みやすくなるとしている蒸留所もあって、マチマチだ。

また、香りづけはというと、アルコール含有量に対して3%まで。ハーブや、フルーツなどの無害な植物の成分や、そのアルコール抽出液、および水溶液での香りづけを認めている。

しかし、これも蒸留所によってさまざまで、小さな蒸留所などでは、こうした香りづけをしない傾向がある。が、一般的な蒸留所は、イタリアの常として、この3%ルールをかいくぐる方法を見出そうとしているようだ。この3%を超えた場合は、リキュールあつかいになるからだ。それに、カラメルなどでの色づけも、認められている。

■ シベリウス 交響曲第6番ニ短調

ベルグルンド/ヘルシンキ・フィルで聴く。美しいこと、この上ない。それも透明感と硬質さ、不純な物のまったく存在しない演奏。

第1楽章は、早めのテンポで、神々しいほどの美しさ。第2楽章も、じつに神秘的な雰囲気をいっぱいに漂わせている。第3楽章のリズム感も素晴らしいが、終楽章では、美しさここに極まれりという感じ。

この曲は、一般的にニ短調とされているが、じつのところ教会調であるドリア調。そのために、何か非常に荘厳、かつ神秘的な雰囲気を漂わせている。ここではもうたんに地上世界の自然というよりも、何か森羅万象の域にまで達してしまったかのよう。とりわけメロディアスでありながら、涅槃の雰囲気を持っているフィナーレにたまらない魅力を感じる。

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