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甘味のあるウイスキーとも、好相性のフルム・ダンベール!

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甘味のあるウイスキーとも、好相性のフルム・ダンベール!

☆ Today’s Special ☆■ 

Say Cheese!; フルム・ダンベール
チーズのなかでも、その個性が際立つブルーチーズ。ちょいグロテスク、ピリッと刺激。そのダイゴミはというと、クリーミーさと、豊潤さにかかっていると、よくいわれる。

そんななかでも、フランスのブルーチーズは、塩味がキツめである。その代表格でもある、ロックフォール。塩っけが強いのには、むろんワケがある。青カビの働きを、カンペキに促進させるためなのだ。だからこそ、世界一のチーズともいわれるのだ。

そんなロックフォールにくらべると、食べやすいブルーチーズの代表格といってもいいのが、フルム・ダンベール(Fourme d’ambert)だ。青カビの多さにもかかわらず、いかにもマイルドな味わい。塩味も、わりと穏やか。酪農家たちから、
「高貴なブルーチーズ」
と呼ばれていて、パセリ状に広がった青カビの美しさと、おいしさから親しまれているブルーチーズである。ロックフォールと、人気を二分する。味わいもえぐみがなく、塩っ辛すぎず、チーズの中身もなめらか。なかなかの上品な味わい。初心者から、ツウまで、オールマイティーに満足させてくれる、大変バランスのいいチーズなのだ。

とはいっても、ピリッとした辛味も、青カビの苦みも、むろん効いている。そんな辛味と、苦みがミルクの甘みにうまくのっかっていて、やさしいクリーミーさが、最大の特徴である。

とりわけ、食べ終わったあと、ふんわりと漂ってくるあの青カビの風味は、じつに豊かである。直径13cm、高さ19cmの長身の円筒形。2kgもの重量がある。通常、水平にカットして円盤状、あるいはその半分の半月形で売られている。

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 フルム・ダンベール、その歴史
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ロワール河の上流、中南部の山岳地帯、オーヴェルニュ地方の最北端の東部。夏はとてつもなく暑く、冬は長~くて、寒~い、厳しい「オー・フォレ」の山岳地帯。そのフォレ山地の町・アンベールに伝わる良質な牛のミルクからつくられる。歴史も、古い。あのカエサル(ジュリアス・シーザー)が帝政を築いた時代よりはるか前、すでに存在していたとされる。

記録としては、8世紀に記された製造許可証にまでさかのぼることができる。20世紀初頭まで、夏は山小屋で、冬はふもとの農家でつくられてきた。そして、標高600~1600mのリヴラドワと呼ばれる斜面を利用して、ごつごつした岩のくぼみで熟成させていた。

ちなみに、このフォレ山脈の東側の町と、西側の町で同じチーズがつくられていて、西側斜面(ピュイ・ド・ドーム県)がフルム・ダンベール。東側斜面(ロワール県)が、フルム・ド・モンブリゾン。2兄弟と、呼びならわされている。

どちらもウシ乳からつくられているが、フルム・ダンベールはロックフォールに似た青カビを持つ。名前の「フルム(fourme)」は、オーヴェルニュ地方では、古くからチーズをイミする言葉。フルム・ダンベールは、アンベールのチーズということだ。

フルム・ド・モンブリゾンは、表面を塩水でぬぐい、杉の木の棚で熟成するので、オレンジ色を呈している。こちらのほうが、青カビも塩分も少なく、やさしい味わいだ。

フルム・ダンベールの外皮は、白や、赤みがかった茶色のカビでおおわれていて、よく乾き、かたい。ひび割れしている場合もある。青かびの風味が、しっかりしている。中身はというと、クリーム色で、しっとりなめらか。緑色の青カビがパセリ状に一面に散らばり、ポロポロしていない。

残念ながら、現在では農家製はなく、すべて近代的な工場でつくられるようになっている。そのためか、熟成早期に包装して、出荷するため、外皮は湿りがちで、弾力がなく、締りがなくなった。

工場に搬入されたウシ乳の73℃、15秒の熱殺菌からはじまる。35℃に落とし、チーズ・パッドにおさめ、つづいて、青カビの種菌を接種。そのうえで、乳系スターターを添加し、乳酸発酵の進行をうながす。ブルーチーズのカビは、あのペニシリンをつくるカビの仲間を使用しているが、白カビチーズのように、チーズの形をつくってからカビをうえつけるのではなく、ミルクの段階から混ぜ込む。

適量のレンネットよるジャンケット形成にかかる。およそ30分くらいで、カッティング。チーズ・ハープを前後に弧をえがくようにカク拌。それにより、ジャンケットは1.5cmのカード切片の固相と、ホエーとに分かれる。

そして、ゆるやかにカク拌しながら、30分。個々のカードが弾力性を感じさせる粒子に変移した頃合いを見はからって、カク拌を中止。ケトルの底にタイ積したカードのかたまりを、麻布ですくいとる。それから、ケトルの縁に渡してある棒にぶら下げ、水切り。それが終わると、袋ごとにプレス台に移し、厚手の板に挟みこみ、翌朝までプレス。

それを揉みほぐして、食塩をふりかけ、そしてよくかき混ぜ、型詰めにかかる。型は、内径12cm、高さ30cmの円筒である。プレスなしで、4~5日かけ、毎日1回の上下反転を繰り返すことになる。目安は、水分レベル45%を目指す。

その生チーズは、直径12cm、高さ20cmの縦長の円筒形。それを、予備発酵室のモミの木の棚板に横置きして、1週間。それぞれ毎日1回、棚板のくぼみごとに半回転させていく。

ついで、チーズ内部に空気を補給するための穿孔。青カビは、その針のあとに、まっすぐに走る。直径2mm、長さ10cmほどの金串を、自動穿孔装置を利用して、チーズ側面に約2cm間隔で突き刺していく。

あとは、温度10~13℃、湿度90%の発酵室で、青カビの発芽、増殖。自然に形成された表皮により、空気を阻害され、青カビはあえなく停止、あとは熟成を待つばかり。熟成期間は、およそ2~3ヶ月。フランスの、ある地方では、チーズを熟成させるため、ヴヴレを加えたりもする。

そう、通常4ヶ月以上の熟成期間をおくロックフォールとちがって、熟成期間が短いのだ。熟成がすすむと、むろん塩味も、辛味もつよくなる。

食べごろは、夏から秋。切り分け方は、扇型にカット。フルムダンベールは高さがあるので、横に切って、高さを半分程度にする。召し上がる30分ほど前に、食べる分だけカットして、空気に触れさせておくと、青カビがイキイキしてくる。

食べきれないときは、乾燥しないように、切り口をラップでしっかりおおうこと。それと、冷蔵庫内のほかの食品に青カビが移らないように、しっかり密封して保存。保存中は、青カビがやや黄灰色になるが、空気に触れると、また美しい青カビの色にもどる。

ブルーチーズの塩気は、ドライフルーツやジャム、ハチミツといった甘味のある食材とよく合う。色味のキレイなフルーツと合わせてみるのも良い。定番といわれているのが、マスカット。このようなチーズだけに、ワインにも合わせやすい。とりわけ、ワインは甘めのデザート・ワインや、フルーティーな赤ワインと良くあう。

それに、なにも優しいクリーミーさのあるフルム・ダンベールに限ったことではないが、
「ブルーチーズは意外や、ドランブイや、アイリッシュ・ベルベットのような甘めのウイスキーとの相性も、おもしろいかも。シェリー樽熟成のマッカラン、それとサントリー・山崎などにも、いけそうだ。それは、ストレートを基本に、1対1くらいまでの水割りが好ましい」
と、ウイスキー評論家・土屋守氏が語っていたことを、ふと思い出した。

薄く切ったライ麦パンに、バターのようにうすく塗って、赤ワインとも。あと、スパイシーなワインでも。食通のあいだでは、スティルトンのように中をくりぬいて、ポートワインや、マディラを入れて楽しんだりもするということだ。

ほかに、サラダにちらしたり、とかしてジャガイモにかけたり、パスタのソースにしたりと、料理用としても、じつにすぐれている。

参考;『チーズ図鑑』(文芸春秋編、刊)

 

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