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パルミジャーノ・レッジャーノ(2/3)

パルミジャーノ・レッジャーノ

偉大なる怒りん坊の指揮者・トスカニーニもまた、生粋のパルマ出身である。1867年、貧しい靴なおし職人の家庭に生まれた。

かれの音楽的な才能を見出した女教師などの口ぞえで、9歳でパルマ音楽院に入り、チェロと作曲を学ぶ。在学中から、レジオ劇場でチェロ奏者として活躍。

1986年、プロとして移動歌劇団のチェロ奏者兼合唱指揮者として同行。リオデジャネイロで、「アイーダ」を予定していたものの、正副指揮者が不評で、スコアに精通していたトスカニーニに代役がまわってきた。

そんなかれだったが、名演を聴かせ、観客を魅了したようだ。19歳の青年トスカニーニの指揮者デビューであった。1987年、チェリストとしてヴェルディの「オテロ」初演に参加し、ヴェルディの音楽に完全に魅了され、生涯の師として仰ぐことになる。

さて、前回『パルミジャーノ・レッジャーノ』(以下、パルミジャーノ)の続きだ。



カード粒子は、大なべの底に沈降させて30分間。その間に、ホエーを半分近くくみ出し、早くカード粒子を沈めるのだ。

そのカード粒子の癒着を待って、その丸く固まったカード粒子をすくうために、ボートの櫂(かい)のような「パーラ」を使って、カードを浮き上がらせ、その下に「カナパ」という麻布を同時にすべりこませて、カードをすくいあげる。

そして、二人がかりで、布を動かしながら、カードを丸めていき、そのカードの入った布を太目の棒にくくりつけ、吊るす。

水切りをするため、さらにしばらく置いておく。それは、ホエーを抜きとるためだ。それから、そのカードの塊りをナイフで2つにわけ、それぞれ薄い布に包んで、ほどよく水分がぬくために、またしても30分ほど吊るすことになる。

ついで、「ピヨーポ」という直径45cmほどの木型に、布ごとカードをいれ、曲げわっぱで木型を締め付け、形を整え、さらに木製の釜のふたのような7~8kgの重石をのせて水分をぬいていく。

1日ばかり待って、成型が終わった生チーズを木枠からはずし、布を取りはずす。それから、パルミジャーノの刻印がほどこされている和太鼓に似た胴回りがふくらんだステンレスの器にいれかえて、ふたたび締めつけていく。

ホエーをほぼ完全にぬき、標準の形にととのえ、そのまま数日間、加湿室の棚に置いておく。この地点でのチーズの形状は直径40cm、高さ23cm、重さが30kg前後だ。

ここから、飽和食塩水に20~25日間つけ込み、毎日反転させながら、チーズ内部へ塩分の浸透ををはかる。その後、型枠を外し、熟成用のカーブの棚へと移し、1年間ゆっくりと熟成させることになる。

この間、何度となく表面に出る脂肪の汗をブラシでぬぐうケア作業を繰り返す。これで、パルミジャーノの特徴でもある無類の風味がかもしだされる。

パルミジャーノは徐々にチーズ表面の厚みが増しながら、中身はチーズ分の発酵的分解をすすめ、脂肪酸と、相当量のアミノ酸が蓄積されていく。

生産して6ヵ月後、チーズの出来具合を確かめることになる。それは、バッティトゥーラと呼ぶ熟成師が「アーゴ」(針)をさして熟成状態を見ていき、「マルテッロ」という小さな金づちで、チーズの表面をたたき、その反響によってチーズ内部の組織状況を判断していくのだ。

1年間熟成させたチーズは、専門の熟成業者の熟成庫に移され、1年、さらに最低2年熟成させる。そんな熟成・管理はほとんどは、銀行の所有する近代的な設備の整った巨大な熟成庫でおこなわれることになる。

その間、熟成庫で長くん眠っているチーズは販売できないため、小さな生産者らは資金繰りが大変。そのため、その昔から熟成中のチーズを担保に融資を受けられるという習慣がある。

3年の熟成を経て、政府から委嘱された協同組合の検査官が、チーズの熟成状況を検査。その品質検査をパスしたチーズだけに、製造業者のコードNo.と、「協同組合保護」ときざまれた刻印がほどこされる。

しかし、製造工程中、あるいは保存中に品質上の欠陥がおきたチーズには、X印がつけられることになる。その多くは、微生物による異常風味、カビによる汚染や酸化による変色、異常なガス発酵、チーズダニであるコナダニの発生などがあげられる。

また、原料乳の乳質や、品質不良のスターターに起因することも多い。不衛生な製造、それも細菌性のものが大部分であって、とりわけ問題になるのは苦味だ。苦味物質はカゼインが分解して生成するペプチド、さらに分解して出来るペプトンであるといわれる。



かつては毎年4月15日から11月12日までに搾乳されたミルクのみを使っていたが、1983年より、1年中つくられるようになった。

それまでは、その期間中に製造されたチーズでなければ、名称は名乗れなかった。それに、11月13日から4月14日までの製造チーズは、別個に「冬のチーズ」を意味する「ヴェルネンゴ」と呼びならわし、チーズの胴回りに刻印が義務付けられていた。

それでも、長期貯蔵に耐えるのは、4~10月にかけての青草のシーズンに製造されたチーズに限られていたものだった。どういうものか、飼料としての乾草とか、サイレージなどで補う冬に製造されたチーズは、1年を越すのが精一杯なのだ。

それゆえ、1つの夏を越したチーズ→フレスコ
2つの夏を越したチーズ→ヴェッキョ
3つの夏を越したチーズ→ストラ・ヴェッキョ
4つの夏を越したチーズ→ストラ・ヴェッキオーネ
と呼んでいた。専任の検査員になる検査を経て、「長期熟成に耐えるチーズ」として、認証を受けたチーズに限って、ストラ・ヴェッキョ、ないしは特別扱いのストラ・ヴェッキオーネとなった。

余談だが、とりわけパルマ、マントヴァ、ボローニャなどの地域では、4月15日から11月11日までのあいだに搾乳されたミルクで特別につくられる脱脂乳のフレッシュ・チーズも最高とされてきたものだ。

参考図書;『チーズ図鑑』(文芸春秋編)

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