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ポートワインを一杯、ふたたび(2)

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ポートワインを一杯! 

■ ポートワインふたたび;ポートワインを一杯<2>。
■ ポートワインのタイプ(2)
■ Classical; ショパン

19世紀、いまだ女性がビジネスに関わることがなかった時代、ドニャ・アントニア・フェレイラ未亡人は、ドウロ地域に投資し、畑を買い増しするなど見事なまでの経営手腕を発揮し、ブドウ畑の開発と、ポートワインの生産に情熱を注いだことで知られている。

ドウロ河を上流にさかのぼっていくと、前後左右いたるところに段々畑がみえるが、そのすべてが急傾斜であり、丘の頂きまで達している。その上、その土壌であるうすく板状に割れた色の濃い岩、シストは硬すぎるのだ。

そんな土壌には、ブドウか、ないしはオリーブしか育たない。ましてや、ブドウ畑をつくるには、そのシストを細かく砕かなくてはならない。おそろしく手間をかけて、ハンマーでシストを砕き、段々畑をつくり、そのシストのブロックで石垣を築き、細かくなったシストをびっしりひきつめ、表面をならしていくのだ。

もともとは、かの女の夫がけわしい山々を開墾し、ブドウ畑をつくりはじめた。未亡人となったドニャが、夫の意思を引き継ぎ、そんな斜面を削りとり、畑へと造成し、何十万本というブドウを植樹しなければならなかった。

ドウロでも、一、二を争う規模のワイナリーをヴェスヴィオにつくり、それにそれぞれ13.75キロリットルもの容量がある巨大な花崗岩でできた8つのラガール(石づくりの発酵槽)を設けた。 

その完成までに、なんと13年をも要し、これぞ「見本」と称されるまでになったこのヴェスヴィオなるエステートをつくり上げた。今や、伝説にまでなっている評判を獲得したのだ。

ただ現在のブドウ畑の多くは、機械化も進み、段々畑をつくらずに、斜面の傾斜にあわせて、等高線に垂直に植える新しい方法が取り入れられている。

それでも、シャンパーニュの女傑ヴーヴ・クリコをホウフツとさせる、フェレイリーニャと、今なお愛称で呼ばれ、「グラン・ダーム(偉大な貴婦人)」として尊敬されている。

「ポルトガルの宝石」とも称されるポートワインは、ポルトガル北部、ポルト市からドウロ河を上流に100kmさかのぼったところから、スペイン国境までのアルト・ドウロ地区で収穫されたブドウを原料とする、フォーティファイド・ワイン(酒精強化ワイン)である。



そのアルト・ドウロは、標高1000m級の山々にかこまれた地域で、急峻な斜面を利用した段々畑にブドウ畑が広がり、そんな周囲の山々から、大西洋からの湿気と、冷たい風からまもられている。

夏暑く、冬寒い。それに、雨量が少ない。花崗岩質と片岩質、粘板岩質の土壌の畑では、背の低い垣根づくり、地面の幅の狭いところでは株づくりの耕法で、ブドウが栽培されている。

もともと豊かであったとはいいがたいアルト・ドウロの地。2000年もの間、苛酷な自然条件のもとで耕し、世界に誇る優良ワインをつくり出したポルトガル農民の苦難の歴史が残る土地でもある。

この地域で、ワイン生産が活発となったのは、12世紀の半ばになってから。それには多くの修道院が、ブドウ畑の再興に貢献したとされている。ブドウ畑の総面積は、33.000ヘクタール。

そんなのどかで豊かな景観は、世界遺産に登録されてもいる。観光客たちは、リバークルーズや、渓谷沿いをはしる鉄道などで、アルト・ドウロ渓谷の素晴らしい景観をあじわっているようだ。

限定生産地域は、ドウロ河下流域から、3つの地域に分けられている。その下流地域がバイショ・コルゴといわれ、もっとも古くからポートワインを生産。その上流地域が、シマ・コルゴ。質の高いブドウが、収穫されている。

そして、その上流にある地域が、ドウロ・スペリオール。全生産地域の半分近くを占めるものの、ブドウ畑そのものの面積は、ほんの微々たるもの。それというのも、地理的にみて、昔は不利な状況であったためであって、交通が発達した現在、新たなブドウ栽培地として脚光を浴びている。

各ブドウ畑は「ワイン生産者管理委員会(カサ・ド・ドウロ)」によって標高、生産量、ブドウ品種、畑の傾斜、方角、樹齢など12項目によって分類され、AからFの6段階に格づけされている。

ブドウは収穫後、発酵槽に入れられ、2~3日後に77%のブランデーを添加し、酒精を強化。550リットル入りの樽で、熟成される。この作業を「ベネフィシオ」といい、果汁約450リットルに対し、ブランデーの分量はおよそ100リットル。

収穫・醸造するブドウ園は「キンタ」と呼ばれるが、澱引きされた後、樽に詰められ冬を越し、翌春まで「キンタ」で寝かされる。

なお、ブドウは摘まれてすぐに、男たちが歌いながら、一晩中足で踏み潰すのが、昔からのならわしであった。もっとも昨今では、これはもっぱら観光客用のイベントとしかおこなわれず、ほとんどが機械によっている。

翌年の春、本格的な熟成をさせるために、ポルト市対岸にあるヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの貯蔵庫に運びこまれ、本格的な樽貯蔵に入る。

今でこそ、ドウロ河上流から陸路をつかって、樽ごと貯蔵庫に運ばれてくるが、昔はポルト独特のバルコ・ラベロという小型の運搬船である帆掛け舟で、ドウロ河を下って運ばれてきたものだ。 

ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアはドウロ河河口にある。ドウロ河上流でつくられたポートワインを、ドウロ河河口へ運び、貯蔵。その貯蔵倉庫はロッジと呼ばれ、酒商人の倉庫であって、製造者(キンタ)と、販売者の関係にある。

さらに、ブレンドされて、瓶詰めされ、原産地証明シールが貼られ、ポルト市の港から世界に出荷されるという具合だ。ポルト市は、首都リスボンに次ぐ第二の都市であり、ポルトガル発祥の地。ここは、大航海時代の拠点港として発達した街だ。

ローマ時代からの港町「ポルタス・カーレ」が国名の起源。11世紀に、イスラム教徒からこの地を奪回したフランス貴族が、ブドウを栽培していたことから、後にポートワインの産地となった。

大航海時代には、エンリケ航海王子がモロッコのセウタを攻略した際の出発港としても知られ、以後ポルトガルは、海外へと大きく飛躍。同時に、ポートはワイン貿易を主とした商業の中心地として栄えたものだ。

1970年までは、550リットル入りの大樽に詰められ、イギリス、デンマークなどへ出荷され、瓶詰めは輸入業者や、ワイン商がやっていた。しかし、1970年以降、すべてのヴィンテージポートは、ヴィラ・ノブァ・デ・ガイアにおいて輸出業者が瓶詰めをおこなうようになった。

なお、1978年からは、ドウロ川上流の限定地域内でも貯蔵が許されるようになった。ポートワイン協会の検査を受け、合格したものだけにポートワインの呼称が許されている。

※ポートワインのタイプ(2)

■Tawny; ルビーを黄褐色になるまで樽で4年以上熟成し、ルビーポートを樽で長く熟成させると、色素の赤味が失われるため黄褐色になることから出た。ホワイトと、ルビーをブレンドした安価なものと、樽で長期熟成させたものがある。

カテゴリーとしては、タウニー、タウニー・リザーブ、エイジド・タウニー、コレイタと分類される。

大量生産の気軽なタウニーは、バイショ・コルゴの凝縮していないブドウをつかい、いわゆる「ドウロ焼け」で、暑い場所で熟成を早める作業や、最後にホワイトポートを少量ブレンドして、タウニーっぽいコハク色に調整する作業などもおこなわれている。

ルビーポートは大樽で熟成、タウニーは小樽で熟成させる。したがって、タウニーのほうが樽の香りが強い。

ヴィンテージ表示のあるものは高級品で、10年、20年、30年、40年以上の4つが規定されている。いわゆるエイジド・タウニーである。黄褐色で芳醇な甘味、食後酒として申し分なし。 ナッツ系やそれほど甘さが強くないデザート、ドライフルーツや、パウンドケーキとあわせてみては。

一般的には、赤味の残っている若いタウニーが飲まれ、一度ボトリングすれば、常に飲みごろを保ち、室温でサーヴィスするか、食事の終わりに、やや冷やして楽しまれている。世界で最も多くポートワインを飲んでいるのは、フランス人だが、飲まれているのは、多くは若いルビーと、若いタウニーがほとんど。

表記なしの若いタウニーは、熟成度合いや味わいでいえば、ルビーとさほど変わらない。輝くコハク色。メイプルシロップや、カラメルのような甘さと、アプリコットのような甘酸っぱい香り。ナッツやチーズと相性がいい。スティルトン、アーモンドとともに。

フランスでは、やや冷やして食前酒としてよく飲まれている。カステラや、パスティス・デ・ナータ(エッグタルト)などのお菓子に最適。

□ 10 Year Tawny Port
きれいなチョコレート色に熟成している。とろりとしたツヤ。木の香りと、ナッツの香り、イチジクや、スパイスの香りも、広がりが豊かだ。

そのほか、
■Blanco: エスナガ・カン、マルヴァジア・フィナなど土着品種の白ブドウを原料に、3~5年熟成させたもの。冷やして、アペリティフに。黄金色で、甘口から、辛口まである。

アルコール度数は、19~22度で、多くは甘口。食前酒としてデンマークなど北欧では、特に人気がある。トニックウォーターや、ジンギャエールを加え、レモンを添えるとさっぱりとした口当たりの良いカクテルとしても楽しめる。

数量的にはごく僅かで、ほとんどがポルトガル本国で飲まれている辛口は、アペリティフ向き。

■ライト・ドライ: 白ブドウを原料とし、低温で通常より長く発酵させてから、ブランデーを加え、比較的辛口タイプに仕上げたホワイト・ポート。

やや黄色がかったうすいコハク色で、甘いりんごの蜜や、ハチミツの香り。ベタつき感は、それほど残らない。デザートだけでなく、前菜にもあう。エッグタルト、タラのコロッケ、オリーブと合わせて、どうぞ。

★ 参照;『ポートワインを一杯』(著:アンドリュウ・ガーヴ) <ハヤカワ文庫 /イギリス・ミステリ傑作選’75(編:ジョージ・ハーディング 訳:青木久恵、他)
★ 参考図書;「シェリー、ポート、マデイラの本」著作: 明比 淑子



♪ ショパン エチュード&バラード ♪

『ショパン・エチュード』と呼びならわされ、練習曲でありながらも高い音楽性をもつ『12の練習曲』作品10と作品25。合わせて24曲あるこのエチュードは、「エチュードの最高峰」ともいえる作品であり、このなかには、『別れの曲』や『黒鍵』といった有名な作品も含まれている。

ポリーニ の実質的なデビュー盤にして、最高傑作。誰もがショパン・エチュード録音の頂点と認める完璧な演奏。また、多くの演奏家は、ショパンを弾くときに過剰な感情表現をしがちだが、このアルバムでのポリーニは、詩情や余分な抒情性を排して、徹底的に技術面を追い求めているのが特徴。

名曲ぞろいのバラードだが、その中でも特に優れており、さらにショパンの全作品中でもとびきりの傑作とされるのが、この第4番。

透き通った静謐な音色が、ことのほかショパンに合うツィマーマン。無限と思われる音色をじつに正確、精巧な打鍵でコントロールしている。安易に弾き流す音は、一切存在しない。

完璧主義という言葉は、この人のためにあるとしか思えない演奏ぶり。また音色だけでなくアゴーギク、デュナーミクの幅が広く、随所で劇的な表現が見られるのも印象的だ。なお、同時収録されている幻想曲と舟歌は、これらの曲のベスト録音ともよべる名演。

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