ああウイスキー! 遊びと悪戯の命!
詩人の心からの感謝を受けてくれ!  (中村為治訳 「R.バーンズ詩集」岩波文庫)

オーヘントッシャン(AUCHENTOSHAN )  魔法の呪文は、おとっちゃん?

まるでハリー・ポッターの世界から抜け出たような、この呪文のような名前を持つオーヘントッシャン蒸留所は、クライド川とキルパトリックの丘のあいだにある。それは、グラスゴーからクライド川にそって北西へ10キロ、アーカイン橋の北のたもとだ。

「野原の片隅」の意味を持つ。しかしながら、オールド・キルパトリックの丘のこのクボみこそは、そのむかし、まさに密造酒づくりの適地だったのである。

創業は、1800年となってはいるが、じつはよくわからない。1823年に、アイルランド出身の穀物商人・バロックが正式にライセンスを取得し、設立はした。そして、もちろん、アイリッシュ・ウイスキーのように、3回蒸留をおこなっていたのだが、経営にいき詰まり売却してしまったのだ。その後、いく度かオーナーの交替があったようだ。


そんな折に、第2次世界大戦時、重工業の中心であったグラスゴーはドイツ軍の爆撃にあって、1941年に蒸留所が破壊され、生産はストップ。48年に再開、ようやく50年代になって、軌道にもどったともいう。

1969年、ホテルやバー、レストランを経営する企業が買収し、ウィスキーづくりをはじめた。しかし、1984年、モリソン社が買い取り、ボウモア、グレンギリーとともにオーヘントッシャンを所有することになった。1994年には、サントリーがこれら3つの蒸留所を傘下に収め、現在子会社であるモリソン・ボウモア社が運営をおこなっている。

「ライトなシングル・モルト」
といわれる。ローランド・スタイルの古典的なウイスキーである、この繊細なモルトはライトであるにもかかわらず、充分に満足すべき熟成感をともなっている。それは伝統的な3回蒸留によってつくられるからだ。

それは、ふつうの2回蒸留にくらべ、余計に手間がかかる3回蒸留は、アルコール度数がそれ分高くなり、熟成も早くすすむ。ローランド・モルトが、ハイランドのものに比べて、マイルドでやや個性に乏しいのは、そのためである。

しかし、淡いコハク色で、フルーティーで軽快な香り、フィニッシュはクリーンで、ドライ。クセのないマイルドでソフトな味わいは、モルト入門者や女性にうってつけでもある。食前、および食後酒に。ローランドの伝統の味を知るためには、はずせない一品。

ところで、ローランド地方は、スコットランド首都・エジンバラや、商工業の都市グラスゴーがあり、ウイスキーづくりの面でも先進技術がまっさきにおよび、グレーンウイスキーの蒸溜所もローランドに集中している。

さて、そのグラスゴーにあるグラスゴー大学には、あのニッカ・ウヰスキーの生みの親・竹鶴が留学した大学だ。まさしく、ローランドこそは、日本のウイスキーの原点にあたるともいえるわけだ。

オーヘントッシャン蒸溜所は、仕込み水として蒸溜所の北のココノ湖の水を使用している。おもしろいことに、その水源はというと、ハイランド側にあるのだ。
「長年、この水を使っているので、夏場などで水が少なくなったときは、蒸溜を休むことにしている」
と、技師長は事もなげにいう。これこそ、オーヘントッシャン蒸溜所の誠実ともいえるウイスキーづくりの姿勢である。それに、ピート香の軽い麦芽を厳選し、銅製の糖化槽で仕込み、醸造は昔ながらの木桶発酵槽でおこなっている。

ここオーヘントッシャンの蒸溜室には3つのランタンヘッド型の釜が3基、ワン・セットで並んでいる。初溜釜のウォッシュ・スチル、通常の蒸溜所の再溜釜にあたるスピリッツ・スチル。その間に、インターミディエイト・スチルと呼ばれる中間釜が立っている。

それは、ウォッシュス・チルでアルコール度数18%ほどへと蒸溜され、真ん中のインターミディエイト・スチルで54%にたかめ、そして最後のスピリッツ・スチルでアルコール度数81%ほどのモルトウイスキーが取り出される。これを58~64%まで割水して、貯蔵することになる。

3回蒸溜という手間のかかる製法は高価ではあるが、それだけ良い結果をもたらしてくれる。というのも、なぜか熟成が2~4年早いのだ。5年もすれば、十分まろやかに熟成し、シングルモルトとして味わえる。さらに寝かせれば、その香りはうんと深まり、素晴しい開花をみせるのだ。

なお、ボトル・キャップには、いかにも伝統の技を守っているとの心意気を示しているように、蒸留器のイラストが3つ並んだロゴが使われている。オフィシャル物として発売されているヴァージョンの数も多く、種類の少ないローランドモルトの中では比較的入手しやすく、手軽に楽しめる銘柄といえる。

オーヘントッシャン21年; 3回蒸溜によるローランドモルト最良の逸品。柑橘類をおもわせる甘くフルーティー、エステリー香が心地良い。なめらかなコクの味わい。そして、スムーズで甘味の強いフィニッシュ。

※参考図書;「スコッチウイスキー紀行」(著者:土屋 守、刊行:東京書籍)。



♪ ホルスト 「惑星」 ♪

イギリスの管弦楽作品の人気作。この組曲は7つの楽章から成り、それぞれにローマ神話からなる神々に相当する惑星の名がつけられている。オーケストラの規模も大きく、終曲・「海王星」は女性6部合唱を必要としているため、コストもかかり、なかなか生で演奏される機会が少ない。とりわけ、第4曲「木星」は人気がある。

第一次世界大戦のイメージの濃い「火星」の激しさ、そして「木星」の重厚で、雄大で愉悦感のあふれる。「土星」や「海王星」も、幻想的で神秘的。

惑星を題材としてはいるが、天文学ではなく、占星術から着想を得たものである。冥王星の発見は、ホルストがまだ生きている時のことだったそうだが、各惑星に古代から与えられて来た神話的占星術的イメージを、音楽にした。その冥王星は、2006年に太陽系の惑星から降格になってしまった。ラトル盤ではマシューズ作の「冥王星」が追加されている。演奏はキメ細かで繊細だ。

この組曲には、スペクタクル的要素がある。カラヤン/ベルリン・フィルは、まさに宇宙的な広がりを感じさせる。トランペットの強調やレガート奏法など、まさにカラヤンの演奏スタイルがはっきりあらわれている。レヴァイン/シカゴ交響楽団を振った録音は大迫力で、そのスペクタクル要素を強調した演奏。ほかに、初演者であるボールト/ロンドン・フィルは、どっしりとした重厚感のある演奏である。全体的に、やや速めのテンポ。そのテンポも、積極的に揺らしている。

ホルストは、イングランド中部のチェルトナムに生まれ、イギリスを代表する作曲家の一人である。父は教会のオルガン奏者、母はピアニスト。

■■飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は楽しくほどほどに。