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クリュッグは、卓越したシャンパーニュしか生産しない!(1)

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世界最高のシャンパーニュといえば、知名度、評価、人気のすべて兼ね備えた「クリュッグ」。プレステージ・シャンパーニュとしての地位を、不動のものとしている。「クリュギスト」と呼ばれる熱狂的なクリュッグ・ファンは、今もなお後を絶たたない。

比類なきものをつづり続ける努力が、クリュッグをクリュッグとしている。だからといって、有名メゾンにはつきもののど派手なエピソードなんてない。

代々受け継がれている秘伝のブレンド技術によってうまれるクリュッグは、まさにアート。誰も真似することのできないクリュッグの味わいは、一度飲めば、すっかりとりこになってしまう。パワフルな飲み応えと、上品な余韻のバランスは、さすがにクリュッグだ。

ご存知のように、クリュッグは、家族経営メゾンである。従業員は、なんと45人。しかもシャンパーニュをつくっているのはわずか25人という少なさ。世界中に名がとどろくメゾンとしては、おどろくほど規模が小さい。それでも、
「クリュッグの伝統は変えてはならないもの。私が継いでも、そして孫が継いでも、クリュッグはいつまでもクリュッグであり、その事実は変わりません」
と、6代目当主、オリヴィエ・クリュッグは強調する。創業以来、社長みずからがシャンパンづくりをにない、資金調達のためにLVMHから財政援助を受けてはいるものの、伝統的な醸造方法をかたくなに守りとおしている。

ヨハン・ヨーゼフ・クリュッグ氏は、ヴィンテージの出来、不出来によるバラツキがないシャンパーニュを求め、1843年にクリュッグを創立した。そのかれがシャンパーニュづくりの「ABC」を学んだのが、あの知る人ぞ知る名門ジャクソン。

クリュッグの原点となったのはジャクソンだけあって、品質へのこだわりは、むろん並大抵ではない。品質第一の姿勢をつらぬき、おどろくような大変なことを、いとも当たりまえのようにおこなっている。

まずは、ぶどうから果汁をしぼる際、最初の100リットルは捨てさってしまう。ぶどうの実についたホコリを取り除くために、惜しげもなく捨ててしまうのだ。それに、納得のいかないぶどうは、一切使わない。現に2001年ヴィンテージでは、収穫量の半分を捨ててしまったほどだ。

深みを出すため、一定量は樽で発酵させる。ステンレスタンクを使うより、リスクが大きく高い技術が必要な樽発酵を、現在おこなっているのはクリュッグと、ジャクソンなど数軒だけ。

さらに、ジャクソンは品質を高めるために、今では当たりまえのようにおこなわれているコルクを留める金具(ミュズレ)を開発したのも、ボトルにキャップシールをかぶせるようになったのも、じつはジャクソンが最初。ワインづくりにこだわるあまり、それをきちんと届けるための器具まで開発したのだった。

クリュグのオーク樽による、一次発酵。初代からの伝統であって、樽職人たちが年間を通じ、非常な手間と、コストをかけて、手入れをつづけている。まだランスにはセラーがなく、この場所が畑だったころからの話である。まさにクリュッグのシャンパーニュを語るときに、欠かせないものだ。

複雑さと深み、長期熟成をもたらす205リットルの小樽は、30年以上もの長いあいだ使われている。第一次発酵は短期間でおこない、マロラクティック発酵はなし。還元的な酸化をさせることで、原酒そのものの抵抗力がつき、長期熟成に耐えられるのだ。

樽の風味をつけるわけではないので、新樽は使用しない。その後の第ニ次発酵は、時間をかけてゆっくりおこわれる。区画ごとの鮮やかな個性をなくさないよう、風味をフレッシュに保つために、ステンレスタンクで保存される。

「クリュッグは、通常、ほかのシャンパン・メゾンとは、逆の手順を取っています。まず、グラン・キュベとなるためのブレンドがおこわれ、そのほかのキュベを、その年、生産するかどうかは、その後、決めるのです」
と、オリヴィエは語る。通常、メゾンは、まずヴィンテージ・シャンパン、プレステージ・シャンパンとなるものを先に選ぶ。
「たくさんつくるほど、複雑性が増す。アッサンブラージュに公式やレシピはありません。醸造責任者、3人の醸造家、父アンリとおじのレミ、そして私が、10月から3月にわたって、その250のキュヴェを毎週4、5回の試飲を続ける。150種のリザーヴ・ワインをも合わせると、6~7000のワインを試飲することになります。そこで、グラン・キュヴェのアッサンブラージュを決める大きな決断をします」

このように、その8割を占め、広く親しまれている「グランド・キュヴェ」でさえ、小樽で一次醗酵をおこない、40数種類にもおよぶキュヴェ、クリュの異なる6~10年もののヴァン・ド・レゼルヴをブレンド。この卓越したアッサンブラージュの技術こそが、グランド・キュヴェをマルチ・ヴィンテージと呼ぶゆえんである。

2代目ポールは、たぐいマレなる醸造家だった。異なる畑、異なるブドウ品種、異なるヴィンテージのワインを自分の舌のみを頼りに、アッサンブラージュし、一つの芸術作品に導いたものだ。

そうして、最高を極めたそのアッサンブラージュが完成すると、時間をかけ、オリ抜きを手作業でおこなう。フィルターは使用せず、ごく微量のドサージュ、最上のコルクの使用など徹底して創立以来のスタイルを貫いている。フレッシュでありながら、それでいて複雑性をもあわせ持っているのは、そのためだ。

Krug(2)に続く…

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