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ラヴェルの精神的な故郷、バスク地方のオッソー=イラティ!

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ラヴェルの精神的な故郷、バスク地方のオッソー=イラティ!

♪ ラヴェルの管弦楽曲集を、名盤の誉れ高いクリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団で、もちろんiPodで聴いております。まあ、厳密に言えば、ラヴェルが管弦楽曲を作曲したのは、《スペイン狂詩曲》だけで、後はピアノ曲からの編曲なんですよね…

エレガントで洗練されていて、実に魅力的。これ、決まり文句? 古いメモを見ながら、ところどころ書いては休み、聴いては休みといった具合でなかなか前に進みません。

それというのも、今夜のチーズ・メニューは、「オーケストラの魔術師」・ラヴェルが生まれたフランス・バスク地方のフロマージュ、羊乳でできたセミ・ハードタイプ『オッソー=イラティ』なんです。

ラヴェルの母・マリーがバスク地方出身で、彼は生後3ヶ月までではあるが、そこで育ち、技師である父親の仕事の関係でパリに移住した。ラヴェルは母親を通じて、生涯変わらぬスペイン音楽に対する共感と、バスク地方の愛情を受け継いだともいえます。 ♪

バスク地方は、ピレネー山脈をはさんで、東西にフランス側とスペイン側とに分かれ、独特の文化を持っていて、スペイン側出身でも、有名な仏作曲家がいる。あの、《スペイン交響曲》で有名なラロだ。ただ、祖父の代までで、ラロはパリ生まれ。

バスク民族は、独立心に富み、固有の言語を持ち、伝統を重んじる。ある海洋冒険小説によると、かれらのなかには、海にのりだし、優秀な船員になる男たちが大勢いるらしい。


正式名称は、『オッソー=イラティ=ブルビ・ピレネー』という。なんとも長ったらしいAOC名称だが、ピレネーの羊の産地を一つにまとめたもの。ということは、1個の特定のチーズは存在しない。製造者によって、とうぜん味わいが違ってくるのだ。

共通な特徴としては、中型であり、堅牢、そして熟成が長いということがあげられる。また、チーズ表面に捺印があって、持ち主を特定できるようになっている。

当時の慣習的なチーズの名称を決めたAOC条文を一旦白紙に戻し、1990年、INAOが新たに名称を策定したといういわくつき。

そのためか、生産されるチーズの産地のしぼりこみが図られ、原料乳などの細目を徹底。ちなみに、EUでの原産地認定表示として、PGI認定ラベル。

ピレネーにおける羊乳チーズで、AOCが認めたものすべてを、「オッソー=イラティ」とのみ呼称づけ、AOCの規格に外れたチーズは、たんに「羊のチーズ」として販売される。

この地も、ご多分に漏れず、「オッソー・イラティの道」なんかをつくり、観光事業は活発。協会の40周年記念パンフで、182kmにおよぶ道に標識をかかげ、チーズ農家を紹介。あのアポロンの息子であるアリスタイオスがつくったという伝説もあって、なかなかにぎやかだ。



ベアルン地方のオッソーの谷と、バスク地方のフォレ・ディラティの森に、その名称は由来。3世紀頃、ペコック修道院が設立されて以来、つくられてきたといわれている。

春になると、ピレネーの山に放牧される羊は,主にマネッシュ種を中心に、3種を指定している。顔が黒くて、立派な角を持っているマネッシュ・テート・ノワール種。乳量は少ないが、高品質で、バスク地方の山岳にのみ生息。角がなく、赤茶色のおだやかな顔立ちのマネッシュ・テット・ルース種。そして地域内で育てられた顔が白く、角がやや曲がっているパスコ・ベアルネイズ種の3種のみ。

32万頭はいるといわれる羊をピレネーの放牧。AOC指定の65のフェルミエと、4軒のレイティエでつくられる。また、フェルミエはカイヨラールと呼ばれる山小屋でつくられる。

また、期間限定で、山で生産したチーズ・「モンターニュ」の名称も許される。その期間は、5月10日~9月15日まで放牧した羊のミルクだけを使用。この夏の間、高原の香り高い草を育んだ羊のミルクが、熟成しておいしくなる。

品質管理は厳しく、羊の出産後の20日以内のミルクは使用しない、凝乳酵素は自然のものなどなどを規定。フェルミエは無殺菌乳、工場制は低音殺菌を認めている。フェルミエ自前の醗酵室で、貯蔵・熟成したチーズは、「フロマージュ・フェルミエ」のラベルが貼られる。それでも、羊の搾乳量は少なく、期間も短いので生産量は少ない。

直径:25.5~26cm、高さ:6.9~12cm、重さ:4~5kgの円盤状。フェルミエ製は、直径が24~28cm、高さ9~15cm、重さ7kgほど。プティ・サイズもあって、重さが2kgほどで、全体にやや小さめ。

生産者により違いもあるが、羊のミルクを28~35℃に加熱し、酵素を加えて待つこと、一時間前後で凝乳。水分を抜くため、フエという小さな道具で、その凝乳が粒状になるまでカクハン。それをすくって、型詰めに入り、軽くプレスしながら、3~24時間かけて水分を抜く。その後、食塩水に漬け、軽く塩を振り、醗酵室へ運び込まれる。

熟成は、産地内で生産日より最低90日以上。小型サイズは、最低60日となっている。その熟成中にブラッシングを繰り返し、自然にできる硬い外皮。その中身はというと、オレンジがかった黄色から灰色で、キメ細かくしなやか。表面の白いアミノ酸の結晶は、絶品の証。

素朴で深い味わい、それでいて、歯ごたえ十分。旨味と、酸味がほどよく調和。とりわけ、フェルミエ製は羊臭さはなく、ハチミツの甘さを思わせる。輸出用は、おそらく殺菌乳と思われるが、ショップで見つけたなら、即ゲットをお勧めする。



山のチーズには、やはりコシのあるワインを合わす。マディラン、ガイヤックなどのフルの赤とあったが、どうなんだろう? 聞く所によると、地元では、ブラックチェリー・ジャムを添えて、安いシードルとで食べているそうな。なんか、ワインより、合いそうな気がするんだが・・・

薄くカットして生ハムと。デザートには、さくらんぼ、カシスのコンフィなどと合わして、どうぞ。

参考;『チーズ図鑑』(文芸春秋編、刊)

再投稿。

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