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フェルメールも食べたゴーダチーズ! 其の弐。

cheese

”北欧のモナリザ”としてあまりにも有名な「真珠の耳飾りの少女」を描いたオランダ・デルフト出身のナゾの天才画家・フェルメール。その「絵画芸術」をはじめ多くの作品の背景に、オランダを中心にした世界地図が描かれている。

かつて世界帝国を築いたオランダ。海洋貿易で莫大な財産を築いたオランダ。フェルメールが生まれた17世紀初頭は絶頂期であった。

そして、オランダの輸出品目の最重要産目が『ゴーダ(Gouda)』だった。ちなみにゴーダはオランダ語でハウダと呼び、チーズはカース。

大工場制が、生産量のほぼ半分を占める。20世紀初頭、輸出の伸びと比例して、工場制手工業へと変化。800を越す工場が一気に設立されたともいう。1990年代にもなると、63もの日産一万トン製造のチーズ工場が相次いで設立され、生産量も一気に増加。

19世紀以前は、「農家のゴーダ」(ブーレンカーズ)とよばれ、朝・夕の搾乳ごとに、1日2回製造。女性たちが、チーズづくりの担い手だった。

ストレーザ協定(※01)により、ブーレンカーズのチーズが見直され、5~10月にかけてのシーズン限定で製造される。それは、「ネーデルランド酪農乳業研究所」の指導の下、安全対策はもちろんのこと、品質の安定をはかっている。

製造工程はというと、まずは殺菌したウシ乳をチーク材のチーズ・タブに流し込み、塩化カルシウム、レンネットなどのスターターを加えて、攪拌。

殺菌方法には、2通りある。一つは、62~65℃で30分間加熱する低音過熱法。もう一つが、72~75℃で15秒間加熱するHTST殺菌法(遠心分離による除菌装置)がある。

30~32℃の一定温度におき、そのまま、30分ほどしばらく静置しておくと、ヨーグルト状のジャンケットに変移。その凝乳上層部に割れ目を入れたときに、澄んだホエーがにじみでてくることを確認してカッティングに入る。そして、ピアノ線を取り付けたカードナイフを操作して、1cm角の小豆大にカット。

31℃に保ちながら、7~8mm角のカード切片と、ホエーとに分離するまで10~15分間、ゆるやかに攪拌。粒子といえるほどの硬さになって、攪拌を中止し、カードが沈降するのを待って、ホエーの排出を早めるために、配乳量の1/3ほどをくみ出す。

ついで、80℃の熱湯をシャワーにして注ぎ、チーズタブ内の温度を31~34℃に加温し、15分後に中断し、再びホエーのくみ出しを行うが、今回はほぼ1/5。

また、攪拌しながら熱湯シャワー。適正な固さになったカード粒子はチーズタブの底に沈み、それはよく収縮し、ほどよい弾力性を持っている。固くなったカード粒子は、ホエーを排出しにくくする。

手のひらに載せて握り締め、開いたときカード粒子がくっつかずにほぐれる状態がOK。それを片隅に寄せ集めて、麻布ですくい上げて、モールディングといわれる型詰めに入る。

底の周辺部に丸みを帯びたチーク材のモールドの大きさに合わせて入れ、プレス作業に入る。プレスは、カード粒子のブロックを生チーズの円盤状に成型するための作業となる。

ホエーを搾り出すために、圧搾機にかけるとか、重石を乗せるなどして、およそ20分間プレスし、カードマスをつくりあげる。それを所定の大きさにカットしてモールドに詰める。

その成型されたかたまりであるグリーンチーズをモールドから取り出し、生チーズの表面を滑らかにしたりして成型する。

朝方の製造分は翌朝まで、また夕方のものは翌晩までと、それぞれ1回ずつ反転させる。またも、重石を置くなどして、本プレス。これが、およそ3時間ほどだ。モミノキの棚に横置きなどして、数回反転させ、チーズ表面の湿り気をとる。

さて、加塩だ。雑菌の繁殖を抑えるため、塩分濃度25%ほどのブラインといわれる食塩水に浸漬。

小さな5kgの生チーズは、2日間。中くらいの9kgのそれは、3日間。13kgの大きなものとなると、約5~6日間ぐらい漬けて、チーズ内奥に塩分を浸透させる。いわゆる塩水加塩法なるものだ。

その後、熟成庫に移し、10日間の間塩水のしたった布でチーズを拭く。ついで、表皮形成のため湿り気をとるために、乾布で拭きながら、1週間ぐらい1日1回反転を繰り返す。保管して、2週間あまりでボディはしっかりしてくる。

それから熟成へと移行。その間、布で拭いたり、反転させる作業を続ける。リンドレス・ゴーダの場合、表面が乾いた状態で、カビの発生を防ぐため、樹脂製の塗布剤を入念にぬりつける。

加塩後、チーズ表面を強制的に乾燥させて、樹脂フィルムで密閉することもある。薄い皮膜を通して、水分がゆるやかに発散するのだ。

そんなプラスティ・コートの出現でボディがやややわらかめになって、以前のような表皮がかため、またボディがかためのチーズは少なくなった。

かたくなった表皮を削り取り整形し、計量し包装。1個ずつ黄色のワックスでおおっていくのが、伝統的。そして、チーズの異常とか、風味などを検査して出荷とあいなる。

なお、クセもなく、サンドウィッチに重宝されるベビーゴーダの熟成は10ヶ月まで。製造過程のゴーダを、小さな型枠に入れて成型。塩水から出して、赤いフィルムにくるめてから熟成させる。

2ヶ月熟成のものはテンドル、6ヶ月熟成はドゥミ・エチュベェ、1年以上はエチュベェ、と呼ばれる大まかな熟成段階における呼び名がある。

もっと細かく週単位で分類すると、
4~7週目; ヨング、8~15週目; ヨング・ブレーヘン、16~25週目; ブレーヘン、26~39週目; エクストラ・ブレーヘン、40~50週目; オード、1~2年目; オーブル・ヤールフ、2年以上; ブローケルと呼ばれる。

6週間熟成から、食べごろとなる。バターの香りをただよわせ、たわむほどにしなやかである。3~4ヶ月以上熟成となると、中身は小さな気泡が散在し、ぐっとチミツになり、引き締まってくる。マイルド、クリーミーな味わい。もっと熟成させると、アミノ酸の旨味が引き立つようになる。

日本では、多くはプロセス・チーズの主な原料となり、スライスチーズが有名かな。

種類はといえば、これまたヴァラエティ。スモークもの、クミンシード、キャラウエイなどのスパイスの香りづけと、たとえば、こんなものもある。黒こしょう丸ごと入り、刻んだにんにく入り、粒マスタード入りなど。ちょいとした変り種ゴーダとして、ヨーグルト入り、そしてオリーブ・オイル、トマト入りなんてのもある。

ゴーダチーズはチーズらしいチーズといえる。風味もまろやかで、クセもなくクリーミーな味わいでテーブル・チーズとしては欠かせない。それに、調理用としても優れており、まさしく万能チーズともいえる。

さきのサンドウィッチに、朝食やおやつのカナッペ。チーズ・トースト、すりおろしてパスタやグラタンに。ボジョレをはじめとしたワインだけじゃなく、そのままビール、ウイスキーのおつまみに。

※01); チーズだけに特定すると、名称やその使用などを国際的に定めた。その国で製造されたチーズに対してのみ使用される名称があって、他の国ではその国の名称は使えない。フランス、イタリア、スイス、オーストリア、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの8カ国間で定められた国際的な協定。

参考図書;『チーズ図鑑』(文芸春秋刊)

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