チーズ大国・2番目は、もちろんイタリア。おそらく、種類だけでいえば、世界一。
それに、そのほとんどが、ナチュラル・チーズであることも大きな特徴。古代ローマ時代に、アジアから、ギリシャを経由して伝わり、兵隊の常食でもあったらしい。
そのトップ選手は、いわずと知れた『モッツァレッラ』。日本では、イタメシ・ブームにのっかって、ピッツアなんかに欠かせない最もポピュラーなチーズの一つとなった。
イタリア版ミルク餅であるモッツァレッラは、南イタリア・カンパーニャ地方原産であるフレッシュ・タイプのチーズ。3タイプある。
1)ローマ時代に、原産国・インドよりつれて来られた水牛。その乳を原料としたものは、モッツァレッラ・ディ・ブファッラ。
2)牛乳製は、フィオル・ディ・ラッテ。
3)それに、水牛乳と、牛乳をプラスしたものもある。
現在、市場に出回っているモッツァレッラのほとんどは、牛乳製であり、工場制である。
そのカンパーニャ地方で、ちと残念なニュースが飛びこんできた。衛生管理の行き届いた農場で飼育されているはずの水牛から人へ感染する「プルセラ病」(注; 家畜の法定伝染病)が、蔓延したとの騒ぎがあったらしい。乳製品といえども、注意が必要とのこと。政府の風評被害の防止にもかかわらず、水牛製・モッツァレッラの消費がひどく落ち込んでいるらしい。
熱すると、お餅のようになるカードの特性をいかして、パスタ・フィラータ系チーズの手間ヒマかけた工程がはじまる。それというのも、水牛乳は、レンネットでのタンパク質の変性がうまくいかなかったものらしい。ちなみに、パスタは「カード」、「フィラータ」は糸状に裂けるというイミ。
乳酸発酵させた水牛乳をしばらく置いた後、38℃ぐらいの温度でカクハンしながら、レンネットを少しずつ加えていく。それから、35℃ほどの温度で40分ほど置き、カードの固さを調べながら、特殊なカクハン道具(スピーノ)を使い、カードを細かく砕き、浮いてきたら、またカクハン。その固まったカードを取り出し、2cm角ほどの大きさにカット。
95℃ほどの熱湯を加え、熱いうちに、やや小ぶりの桶(パストーネ)のなかでゆっくりこねまわしていくと、カードはトロッとしたお餅のようになる。
ついで、雑菌の集まりである余分な乳糖を含むお湯をきりながら、パストーネのなかで練りあげていく。伸ばして、糸を引くようになると、二人がかりで形を決めて引きちぎる。それを10分ほど冷たい水につけて冷まし、3~5%の塩水につけ、出来上がりとなる。
要するに、出来上がったカードに熱湯をかけてこねることによって、カードの粒子と熱変性させて、伸縮性のあるカードにするわけだ。
でも、出来立てよりも、翌日の方がおいしいともいう。出来れば、2~3日以内に食べきる。冷蔵庫で、1週間が目安(輸入物は、およそ2週間)。
さまざまな形があるものの、10cmくらいまでで、重さもだいたい450gまで。ふぞろいな球状であって、それぞれ呼び名も変わってくる。
通常サイズは、ポッコンチーノ。20~30gほどのサクランボ大は、チリエージー。たまご大の、およそ50gほどのものは、オヴォリーネとよばれる。ほかにも、真珠サイズ、細くカットして結び目のようなものもあって、見た目も楽しい。
水牛製のものは、牛乳製と比べて、やや高価ではあるが、弾力性があり、まっ白でなめらかで、みずみずしい。噛み応えもあり、ミルキーな優しい甘さの広がりが豊か。また、脂肪分が高く、ジューシーで芳醇な香り。薄い膜をまとっているのが、特徴でもある。
さて、食べ方ではあるが、よく水気を切って、いかようにもカットし、オリーブ・オイルをかけ、塩・コショウを軽くふりかけて食べるのがおいしいし、一般的。まるでイタリア国旗のような前菜であるインサラータ・カプレーゼも有名。また、フライにして、ワサビ醤油で食べるのおもしろい。
ワインとのマリアージュを考えるなら、クセのない白がいい。
参考;『チーズ図鑑』(文芸春秋社)チーズ好きなら、持っておきたいこの一冊。
♪♪ ジネット・ヌボーを聴く。蘇ったヌブー! もちろん、愛用のiPodで。不滅の名演奏とも、今なお語り継がれるブラームスのヴァイオリン協奏曲。1948年、イッセルシュテットと組んだドイツ放送響のライブ盤だ。女流ヴァイオリニストの名演が多いこの曲名、ヌボーは、とりわけ傑出している。熱情にあふれ、若さにたがわず、おそろしいまでの気迫が伝わってくる。 ♪♪♪