シェリーは最高に複雑な飲み物の一つなんだ!(3)

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そのシェリーだが、製造過程によって、
辛口タイプのパロミノ種だけでも、「フィノ」、「アモンティリャード」、「オロロソ」、「マンサニージャ」、「パロ・コルタード」といったふうに、異なったさまざまなスタイルが生まれる。

そのほか、甘口タイプの「クリーム」や「ミディアム」などのシェリーの多くは、基本の辛口「フィノ」、「オロロソ」2タイプと、甘口「ペドロ・ヒメネス」「モスカテル」などを組み合わされてつくられたものであって、それぞれの組み合わせにより生み出される特徴のハーモニーを楽しむことができる。

そんな「クリーム」や「ミディアム」は、「オロロソ」と「ペドロ・ヒメネス」を混ぜたもので、ほかに「アボガド」、「ドゥルセ」などが有名。最近つくられるようになったものでは「ペール・クリーム」があり、こちらは「フィノ」と「ペドロ・ヒメネス」を合わせたモダンな味わい。

しかし、そのほとんどは、バロミノ種がメインである。あくまで、ペドロ・ヒメネスと、モスカテル種は甘口使用の補助品種である。このタイプは、ブドウを天日干しにし、水分を飛ばし濃縮度をあげ、干しブドウ状態になったものを圧搾するのである。酒精強化しなくてもアルコール度数が高まり、フロールなしでオロロソのように熟成していく。

なお、収穫されたバロミノ種は、以前足で踏んで圧搾してはいたが、今じゃ機械により圧搾され、その方法も3通りある。まずは、一番しぼりモスト。圧力は弱く、フィノなどのドライシェリーや、ブレンドされるシェリーに使われる。やや圧力が強い二番しぼりモストは、ミディアム、クリームなど、やはりブレンドされるシェリーや、ヴィネガーに使用。そして、三番しぼりモストは、スピリッツなどに使われる。

シェリーは、世界的なワインではあるが、イギリスと、オランダが1位と2位を競って輸出量のほぼ6割を占めているという特異な存在でもある。国内、いわゆるスペインで飲まれているのは、およそ20%だ。それも、7割以上をアンダルシア地方で飲まれているといわれる。ということは、上記の3カ国で8割がたを飲んでしまっていることになる。フィノ好きの日本の輸入量はといえば、残念ながら、ほんの微々たるものだ。

しかし、ちょいとおもしろい統計がある。年度は不明だが、そんなに輸出量の変動はない。というのも、ご存知のとおりシェリーには、多彩な種類がある。やはり、フィノが1位なんだが、ほんの僅差でミディアム、ついでクリームと甘口のシェリーが続いているのだ。そう、ゴンザレス・ピアス社のテオ・ペペ登場前のシェリーは、もともと甘かったのだ。

「ティオ・ペペにはじまりティオ・ペペに終わる」
とまでいわれるそのフィノの代表格は、香りは上品にして、繊細。口に含むと、はじける感じがするが、のど越しはさすがになめらか、じつに洗練されているといったふうだ。あのヒュー・ジョンソンは、
「世界で最も有名でまさに最高のフィノのシェリーのひとつであるティオ ペペ」
とたたえている。

フィノは、冷やして飲んだ方がうまい。一度栓を開けたら酸化が始まり、3日以内に全部飲みきった方がいい。そうしないと酸味が出てくる。ただし、冷蔵庫に入れてさえおけば、4~5日は鮮度をたもてる。

アモンティリャード、オロロソは常温で飲むことが多い。こちらも開けたら、早めに飲み切ろう。チューリップである特別なシェリー・グラスをつかうと、なお雰囲気が出るってもんだ。シェリーのびんはワインの露出された表面積を最小にするために、真っ直ぐにたてて、 ほかのワインと同じように、涼しく、暗い場所で保存されるべきである。

日本では、圧倒的に食前酒あつかいのシェリーだが、本場・イギリスでももともとは食前酒とはまったく関係なかった。 それでも、食前酒がメインではあるが、そういうことにあまりかまわず、ちょいとリラックスする時間に飲まれているようだが、かつては食後酒としてはもちろん、食中酒としてもよく飲まれていたという。しかし、シェリーを食前酒としてひろめたのは、イギリスではあったが…

日本酒の冷酒感覚で飲めるフィノ、およびマンサニーリャは、ちょいとツンとくるが、クルマエビやスモークサーモン、スープなど和洋中、とりわけ中華料理のオードブルには最適。チーズもクセがなく、マイルドなものが合いそうだ。しかし、同じ辛口でも、風味、味わいにやや複雑さがみられるやや強めのアモンティリャードとか、やや甘めのミディアムなんかも、中華に合いそうだ。シェリー酒は、スペイン料理だけでなく、和食などさまざまな料理にあう奥の深い、国際的なお酒でもある。

その同じシェリーでも、シェリーのフルボディともいわれ、赤ワイン的存在であるオロロソは、ちと違う。豚肉をのぞいた肉類、それもクセのある肉が合いそうだ。チーズは、熟成された本格派のものを試してほしい。

甘口、極甘口になると、試したことはないが、ペイル・クリームはフォアグラに合うといわれれるが、どうなんだろう。やはり、デザート関連がおすすめ。クリームは、デザート・ワインだ。ブルー・チーズなんかに合わせてどうぞ。それと、ペドロ・ヒメネスは、チョコレート・ベースのデザートと相性がいいらしい。それと、アイス・クリームにかけたら、これはこれでお気に入りのデザートになるはずだ。

保存はといえば、基本的には、空気に触れる面積を小さくすることが肝心である。つまりボトルは立てて置くこと、そして ワインと同じで、冷暗所にて保存。そして、ペドロ・ヒメノスだが、上記の方法で保存しても、糖度が高いので、1ヶ月くらいは持つはずである。 腐ることはないが、ビネガー化することはある。料理につかうのもよろしい。フィノなどは1週間ぐらいで酸化しはじめるので、普通のワインと同じ感覚で、早めに飲んだ方がいいだろう。 色の透明なフィーノ、マンサリーニャのほうが早く劣化、酸化していくからである。

シェリーを使ったカクテルも、日本生まれの「バンブー」、「アドニス」など、非常に素晴らしいものが多々ある。甘いシェリーはダークラムと合わせてみたり、ソーダで割るのもかなり良い。もしくは、料理に使ってみるのもおもしろい。

★ 参考図書;「シェリー、ポート、マデイラの本」著作: 明比 淑子
★      「シェリー酒」著作:中瀬 航也(ヴェネンシアドール) PHPエル新書刊

♪ グルダ、モーツアルトのピアノ協奏曲をひく ♪

モーツアルトひきじゃないけど、こうやってモーツアルトをひくんだということがわかっているモーツアルトひきだ。HMVのレビューによると、
「オケとピアノが互いに全く別の方向性の音楽を演奏しているのに、完全に演奏しきってしまえるところが凄い」
と書いていた。さもありなん、思わず笑ってしまったが、このコンビならやりかねない。ジャケットの写真が、かなり意味深で、秀逸。奇才グルダと、鬼才アーノンクールの迷コンビ(?)。

オーケストラの前奏が始まるが、なぜかピアノの音が、時々聴こえてくる。

ピアノは入らないはずなのに、鳴っている。どうも、グルダが即興で、オケと一緒にひいているらしい。それにメロディに合わせて、グルダの鼻歌もきこえてくる。楽しそうでいい。グルダのタッチも、コロコロと転がるように、流れるようになめらかで、軽快。感傷的な演奏ではなく、ごく自然体でたのしそうにひいているのを感じる。

とりわけ、第3楽章はホント楽しそうで、きいている方も、思わず微笑んでしまうような明るさと、喜びにあふれている。グルダの躍動的なベートーヴェンもいいが、それ以上にモーツァルトもいい。

それと、もう1枚。アバドと、ウィーン・フィルの名盤。21番のハ長調の協奏曲は明るく、美しい。気持ちのいいモーツァルト。この曲の真髄をきかせてくれる。20番のニ短調も、名演。

第1楽章から楽しい雰囲気。歌うところは存分に歌う、グルダ。ウィーン・フィルの響きも、混じりけのない純正ウィーンの響き。そして、美しすぎる第2楽章。まさにはかないまでに、美しい。ウィーン・フィルの弦が、流れるよう。まさにふるいつきたくなるようなメロディをかなでる。

第3楽章は、弾んで、どこまでも笑顔にあふれている。グルダ、アバド、ウィーン・フィルの三者が完全に息を合わせ一体となっている。かけがえのないモーツァルトだ。カデンツァは、いずれもグルダ。

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