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ノルマンディ地方、最古のチーズ、ポン=レヴェック。

cheese

《チーズ・パラダイス》ともいえるチーズ街道が、ノルマンディ地方にある。

小さなフランスと称えられる「カマンベール」、今夜のメイン・チーズの子孫ともいえる「リヴァロ」、そして『ポン=レヴェック』とつらなる有名どころの村々が、街道沿いに並び、伝統的なチーズを生み出している。ちょいと離れたわき道をたどると、「ヌーシャテル」。まさにチーズ好きのパラダイスのような場所である。

ノルマンディ地方は、フランスでも屈指の酪農王国だ。パンダのように目の辺りが黒いブチになっているノルマンディ種の牛がのっそりと草を育んでいるさまは、ユーモラスであり、のどかな雰囲気だ。リンゴが大好きっていうのも、やはりお国柄なのかな。

さらには、チーズのカゲにこそ隠れてはいるが、フランス料理には欠かせないバターは、イジニー村が最上等品であるし、有名シェフ御用達でもある。生クリームも、これまたよく知られたところである。

さて、ウオッシュの代表格ともいえる「ポン=レヴェック」の名称は、ほぼ17世紀ごろに確立されたようだ。起源は、海辺の町にあったドゥーヴィル修道院といわれているが、確証はない。

その昔は、”アンジェロ”、ないしは”オージェロ”と呼ばれ、8世紀ごろには、そのプロトタイプは存在していたといわれ、12世紀ごろ、その名称はノルマンディをうたった詩にも登場している。

夏から冬までが、とりわけおいしいといわれる。白い粉を拭いたようなオレンジ色の厚い外皮に覆われてはいるが、中身は黄色がかった白で、全体に小さな気孔が見られる。ねっとりコクがあり、クリーミーでマイルド。舌触りもいい。食感は、もちもちとした感じ。

麦ワラのうえで熟成させるためか、チーズ表面にその痕跡ものこっている。それゆえに、ワラの湿ったような、漬物のような強い匂いを以前は放っていたが、これも時代の流れか、優しい香りに変化してきたのである。残念なことだが、ワラの布目もプラスティック製の型枠にあらかじめ布目を入れているらしい。

製造場所もまた、特殊な菌を産する一地域ペイ・ドゥ・オージュから、ノルマンディ地域に大きく拡大。フェルミエ製、手工業製中心だった伝統的な製造方法までも変えてしまった。

今日では、大半が中小ではあるが、工業製である。それは、無殺菌乳から、殺菌乳に、また出荷期日にも端的に現れた。なぜだか熟成期間が、短くなったのだ。生産者にとっては、良かったのかも?



製造も戦前は朝、夕の搾乳後、直ちに行われていたが、今日では、冷却保存の進歩もあって、1日1回になった。ウシ乳の搾乳後、36℃に温めたうえで、レンネットを添加。

ジャンケットは、薄刃のカッターで大まかにカット。カードと、ホエーが遊離し始める頃合いをみて、素手でゆるやかにかき混ぜ、カードが沈むのを待ち、ホエーを汲み出す。

カードはろ過布にあけ、水を切っていく。ついで、そのカードを手で揉みほぐして、型詰め作業へ。20分後、1回目の反転。また、一時間後、2回目の反転。そして、翌朝まで静かにおいて置く。

それをまた、3~4日ほど外に出し、表面をよく干し、食塩をすり込んでいく。固めの表皮を形成させるために、また2週間ほど干していく、という具合だ。

その後、チーズは醗酵室に入れられ、ごくうすい塩水で洗いの作業にかかる。まるで塩水がチーズの内奥までしみ渡るのを避けているようだ。まあ、そのため他のウォッシュとは違って穏やかなチーズとなるのだろう。でも、ちょいとモノ足りなさもあるかな。

最初の2週間は、週に3度。次の2週間は、週に2度。そして、週に1度になり、4~6週間ほど熟成後、出荷の運びとなる。戦前はというと、4~6ヶ月もかけていたのである。
そう、塩水で洗い、熟成させれば味わいは深く強くなる。

標準サイズはというと、11cmx11cmx3cm前後の角盤状である。重さは、350g程度。他に、半分サイズ、4分の一サイズ、そして2倍サイズとある。ただ、小型サイズは、環境条件などで、品質にバラつきがあるので、購入する際にはお気をつけて。

ちなみに、代表的なメーカーであるイジニー社のそれは、一級品。大型のプレミス社。コックドール社製は匂いは強いが、絶品ともいわれる。ミルク風味が豊かで優しい味わいの「プチ・ポン=レヴェック」は、塩分控えめのグランドルジュ社製、というハナシだ。

それはそうと、乾燥気味の表皮は、厚く硬め。やや弾力(?)を感じ、プリっとしたやわらかさの頃が食べごろではあるし、その外皮は取って食べた方がいい。食べてもいいが、おいしくないよ。ただ、火を通すと皮も食べられるし、また違った味わいも楽しめる。



ここノルマンディ地方は有名なリンゴの産地、やはりワインよりも、シードルとあわせたい。ワインなら、赤。相性もバツグンにいい。カジュアルな赤でも、ぜいたくにフルの赤でも。ポートも、シェリーもよし。それと、カルヴァドスを忘れてはならない。

フルーツともあわせたい。とりわけ、酸味のあるリンゴ。スライスして、チーズを乗っけるだけ。うまいんだなあ、これが。カンパーニュや全粒粉のパンともに。オードヴル、オムレツに。

参考;『チーズ図鑑』(文芸春秋編、刊)

♪ ドビュッシーの名盤といわれのは、管弦楽曲ではブーレーズとか、マルティノンの演奏に定評があり、ピアノ曲だと、やはり極めつけはミケランジェリというのが一般的なんだろうな。

そんな中でも、<前奏曲集第一巻・第二巻>は秀逸。ドビュッシーのピアノ曲の最高傑作の一つには違いない。冷たく透明感のあるタッチといい、抑制された響きといい、その美しさはたとえようもない。今夜は、walkmanでミケランジェリを聴く。 ♪

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