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ゴルゴンゾーラ、おいしさのヒミツ。其の弐。

cheese

ゴルゴンゾーラ、おいしさのヒミツ。

チーズ切り口の青カビが鮮やかなグリーンで、大理石模様のように美しい《ゴルゴンゾーラ》には、2つのタイプがある。

近年の主流であり、また日本で人気の高い「dolce(ドルチェ)」タイプと、今ではちょいと復活しそうな気配のある「piccant(ピカンテ)」タイプだ。「ドルチェ」は甘口というよりも、穏やかとか、薄口とでも訳したほうがいいかも。


「ピカンテ」は、むろん辛口。”ナトゥラーレ”とも呼ばれる。チーズ内部には、びっしりと青カビがはびこっており、その特有の刺激臭がわれわれを戸惑わせる。そんなこともあって、消費量は落ち込み、ついに家内工業的規模に陥ってしまった。

《ピカンテ》タイプは「ドゥニ=パスタ法」という古来からの伝統的な製法でつくられる。

夕乳と朝乳とを、別々のカードのかたまりであるパスタをつくり、その夕方のパスタと、朝方のパスタを合わせて二層(=ドゥニ)のパスタでチーズをつくりあげる古来の製法だ。

さて、その夕乳のパスタだが、ミルクをレンネットでかため、30分ほど30℃に保ち、ほどよいジャンケットに変移させた後、パスレードのなかでカッティング。攪拌(カクハン)用の独特の器具であるパナローラを手に持ち、40分ほどの時間をかける。

カード切片は、ちょいとかための小指サイズほどに仕上げる。それから、麻布に分配して包んで結び、翌朝まで冷暗所に吊り下げておく。なによりパスタを冷やすためだ。夜間の冷え込みも手伝って硬さも増す。

朝乳の場合は、ウナ・パスタ製法とまったく同じ要領。パスタの冷却もなく、テーブル上で水切りをするだけだ。

次いで、チーズの成型に入る。まだあったかい朝乳のパスタを、あらかじめ麻布で内張りをしてある型の底、その内側にぬりこんでいき、いわゆる鉢状のクボミをつくるわけだ。

そのクボミに、前日の冷えた夕乳のパスタのかたまりをほぐしながら、その真ん中に詰め込んでいく。同時に、青カビの種菌をふりかけながらの作業になる。最後に朝乳のパスタで、フタをするようにぬりこめて、この手間のかかる作業は終了だ。

上下反転を繰り返し、チーズの型を整えていく。その作業が終わると、生チーズの胴にスダレのようなアテ木を巻きつけ、チーズの型崩れを防ぐ。

食塩をすり込むためにアテ木をはずしたり、巻きなおしたりして、2週間あまり作業は続く。この加塩は、<ドルチェ>タイプより、およそ1%ほど意識的に強めにして、4%ほどに。

発酵室で、およそ2~3ヶ月熟成をさせる。そのとき、食塩水を含ませた布巾でチーズ表面を拭きながら、約4週間ほどだ。

生チーズの乳酸発酵の[ph]も下がり、ボディも固まってきた頃あいを見はからって、最初の穿孔に入る。

チーズ上面からステンレス製の串で垂直に約2mmほどの通気孔を2.5cm間隔でうがち、チーズ内奥に空気を送って、青カビ菌糸の広がりを促すわけだ。また、2~3日おいて、上下反転し、同数の通気孔をうがつ。

カビは縦に走っている筋目を中心に発生。そのため、針の痕跡がくっきり残る。

<ドルチェ>の場合、ボディが軟らかく通気孔がふさがれ気味になるため、青カビ菌糸は外気が通じた部分のみに発生。とうぜん、脂肪酸の比率が低く抑えられる。

逆に、<ピッカンテ>の場合は、もろさのある固めの夕乳パスタのため、チーズ内奥まで空気が入り込み、青カビ菌糸がいっぱい発生し、脂肪酸の比率も高くなる。

それから、チーズ内奥に青カビが十分に発生し広がった時期を見はからって、醗酵室に持ち込み、<ドルチェ>は、およそ1~2ヶ月。<ピカンテ>は、2~4ヶ月熟成。

その間、食塩水を含んだ布巾でチーズ表面を拭きながら、リネンス菌の増殖をはかる。そのため、リネンス菌の粘膜で通気孔は完全にふさがれてしまい、青カビは窒息状態におちいってしまう。

青カビの働きは、乳脂肪を分解する発酵だけとなる。それが、<ピカンテ>特有の刺激臭をともなう風味の変化になるのだ。サイズは、円筒状で、直径30cm、高さ20cm、重さ12kg。

最終工程は、スダレのようなあて木をはずし、上下2つにカットし青カビの状態をチェックし、光にあてないように気をつけそれぞれをアルミ箔で包んで出荷だ。

おおまかに言えば、<ドルチェ>はテーブル・チーズ用。また、塩分が比較的低いため、チーズケーキなどお菓子の材料につかわれデザート系のレシピにも多く用いられている。

お手軽においしさを満喫するには、容器に戻して軟らかくなったところをたっぷりとパンに塗るのが一番。また、レーズン入りのパン、おなじみパン・ド・カンパーニュとともに。

それから、これまた定番ともいえる洋ナシとの相性はバツグンだ。皮をむいて、種を取り、ゴルゴンゾーラをのっけるだけで、これまた絶品。

味わいに深みのある<ピカンテ>は調理用が最適だろう。リゾットとか、パスタ用のソースなどが一般的である。ごく簡単なソースの作り方としては、ゴルゴンゾーラを生クリームで溶かすだけでできあがりってのもある。

もちろん、そのまま食べてもいい。パンに塗るだけで、ワインともぴったし。それと、トーストにのっけてハチミツをちょいとたらしてたべるとちょいとぜいたく。現今の料理のライト化により、<ドルチェ>タイプに人気が集まっている。

ワインと合わすなら、<ドルチェ>ならミディアム・ボディの赤、<ピカンテ>なら定番のマルサラをはじめ甘口の白がいいだろうとは思うが、まあいろいろためしてみてはどうかな。

参考図書:『チーズ図鑑』(文芸春秋刊)



♪♪♪ 『ローマ三部作』 ♪♪♪

レスピーギの交響詩・「ローマ三部作」には、いわずと知れた決定盤がある。

その激しさといい、その詩情に満ちた美しさといいトスカニーニ(/NBC)の代表作といえるものが、それだ。惜しむらくは、モノラル録音なのだ。

それでも絢爛たる音の色彩感、弦楽器の切れ味、咆哮する金管楽器が華々しい。管弦楽曲屈指の名曲である。iPodで聴く。

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