パルミジャーノ・レッジャーノ (1/3)

Parmigiano-Reggiano DOP (1)

ジョゼッペ・ヴェルディは、当時フランス領であった北イタリア、パルマ公国の寒村ロンコレで生まれた。

かれの出世作ともなったオペラ・「ナブッコ」第3幕のフィナーレ、”ゆけ、わが思いよ、黄金の翼に乗って”は、イタリア統一運動に影響を与え、イタリア第二の国家ともいわれる名曲だ。それに、よく知られるところでは、「アイーダ」の”凱旋の場の大行進曲”はサッカー、日本代表のテーマ曲ともなっている。

そんなヴェルディゆかりの地・パルマは、美食の街でもあって、最高級の生ハムの産地とも知られる。そして、なによりも『パルミジャーノ・レッジャーノ(Parmigiano-Reggiano DOP)』(以下、パルミジャーノ)がご自慢だ。そのブタ肉加工製造のために、パルミジャーノの乳脂肪分を多量に含んだ「濃厚ホエー」を活用していることは、よく知られるところだ。

ボッカチオの「デカメロン」にも載っている古いチーズでもあり、食通には欠かせないチーズである。それは、ルイ15世の孫に嫁いだパルマ公国の王女がお持ちになって、それ以来、王室のテーブルには欠かせないものなったという例もある。

上品なコクと、豊かな味わいが特徴であって、超硬質チーズの代表格だ。また、脱脂工程のため、脂肪分は32%ほどで、ほかのチーズと比べても少ない。良質のタンパク質であり、優れた子供の栄養食でもあり、女性のダイエット食品でもある。それに、離乳食であったりもする。

2~3年と熟成期間が長く、固くボロボロになったものをすりおろしたり、うすく削ったりして、パスタやカルパッチョなどにかけたり、のせたりして食べる。

でも、世界一のチーズをパスタにすりおろして使用するのは、ちともったいない。かのバルサミコ酢をたらして、ボリボリかじってみようじゃないか。それと当地では、専用のナイフを使って、皮ごと削り取って、リゾットやスープに入れるそうだ。その表皮だが、褐色で非常に固く、6mmと厚い。

注意点もある。粉になったパルミジャーノは時間をおくと、風味が飛ぶだけじゃなく、そのほかの匂いまでも吸収してしまうため、そのときそのとき使う分だけ、すりおろしたほうがいい。



30kgもの堂々とした和太鼓のようなその姿は、まさしく世界のチーズの王様である。直径は35~45cm、高さ18~24cm、重さ24~30kg前後。

より長期に熟成させるパルミジャーノは、表面はピカピカにみがかれていて、その中身はというと、淡い麦わら色で、キメ細かく、ざらざらしている。砕けやすくて、もろい。それでいて、大変高価でもある。

なんでも、2500年前、エトルリア人がつくっていた当時のままの方法でつくられているということだ。

中心地は、エミリア・ロマーニャ州のパルマはもちろん、レッジョ、エミリア、モデナ。それから、ボローニャの一部と、ロンバルディア州のマントヴァの一部が生産地だ。上記2つの町名が、名前の由来だ。

ちなみにワインはというと、エミリア・ロマーニャ州では微発泡のランブルスコ、サンジョヴェーゼ・ディ・ロマーニャ、ロンバルディア州は高級スプマンテのフランチャコルタや、オルトレボ・パペーゼなんかが有名だ。

オランダ産のホルスタイン種を改良したウシから1日2回、搾乳。そして、一日1回の製造。前日の夕方に搾ったウシ乳と、当日の朝に搾ったウシ乳を混ぜてつくるのが特徴だ。

朝夕の搾乳のつど、酪農家はしぼったままの状態のミルクを、かれらが資本参加している工場へと搬入する。

ステンレス製のパットにおさめられ、常温放置されたミルクと、朝の搾りたてのミルクを合わせ、12時間ほどしばらく置き、脱脂したものを使用する。静置することにより、脂肪球が浮きあがり、その形成されたクリーム層ができる。一晩置くことで、自然に分離した乳脂肪を取り除くわけだ。

それは同時に、ミルクのなかの乳酸菌を繁殖させ、適度な酸性となる。それを残し、下層部分のスキム・ミルクを先に抜き取り、そのクリーム層だけをパットに残す。

それというのも、パルミジャーノは熟成期間が2~3年と長い。長くなると、チーズの脂肪分の分解臭がでて、チーズの味わいをこわすことになる。そのため静置時間を延ばすことによって、原材料の段階で、できるだけ脂肪含有率を下げるわけだ。

そんなミルクを、カセッタと呼ぶ逆円錐形の純銅の大なべに入れて、かき混ぜながら26℃まで温めていく。スターターとして、前日のチーズの仕込みで残った温めたホエーをくわえ、さらに加熱しながら32℃まであげ、レンネットを添加し、軟らかめのジャンケットを形成させる。

それは、乳酸菌が増殖しているホエー(「シェロ・インネスト」)をくわえることにより、あの独特の香りと、まろやかな風味を生み出すというわけ。おいしいパルミジャーノづくりには、欠かせない。それにレンネットを添加すると、凝固がスムーズにおこなわれるといった利点もある。

ミルクはたえず攪拌しながら、弱火で33℃。ここで、レンネットをくわえると、およそ15分~20分ほどで凝固する。

固まりはじめたら、「スピーノ」という棒の先に提灯の骨をつけたようなカッターを前後左右円を描くように操作して、カードを素早く細かくカット。さらに、攪拌を続けながら、ふたたび温度を45~55℃にあげていく。

カード切片の癒着を防ぐため、たえずゆるやかに攪拌しつづけたカードは、ゴム質の弾力性のある硬さになり、2~3ミリの米粒大のカード粒子に変わったあたりから、攪拌を強めて、また加熱にかかる。その加熱の進行とともに、攪拌する速度も強めていき、57℃にいたっては、まさにカード粒子をくだかんばかりに攪拌する。



参考図書;『チーズ図鑑』(文芸春秋編)

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