「シャンパーニュと同じシャルドネや、ピノ・ノワールがどうしても飲みたい」
という方々には、『クレマン・ド・ブルゴーニュ』がいい。ブドウ品種は、多くの場合がシャルドネ、ピノ・ノワールを主体につくられている。規定上は、ほかにもアリゴテ、ガメイ、ピノ・ブラン、ピノ・グリも認められている。シャンパーニュはもとより、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエの3種だけだ。

それに、製法の規定も、「瓶内二次発酵」でシャンパンと同じ。シャンパーニュと比較されることも多いワインでもある。しかし、泡立ちはシャンパーニュよりも優しく、ガス自体も弱め。スッキリとした酸味で、さわやかなワインでもある。

フランスでは発泡酒の総称として、ヴァン・ムスー(Vin Mousseux)とよばれる。「ムスー」とは、「泡」という意味。その「ヴァン・ムスー」の人気が増大し、生産量も急増している。それに関連して、ちょいと古い記事になるが、
「ブルゴーニュのネゴシアン、ドミニク・ローラン社がクレマン・ド・ブルゴーニュを発売」
とあった。ドミニク・ローラン社は、パティシエから転進したローラン氏が、1989年に設立したネゴシアン。古木のブドウを買いつけ、マジックカスクと呼ばれる自作樽での熟成で知られる。近年は、息子・ジャンとともにドメーヌをも設立した。
そのクレマン・ド・ブルゴーニュは、ローラン氏の祖父が愛飲していた生産者のワインを買いつけたものだ。「アリゴテとシャルドネを使用し、青リンゴのような香りと、心地よいミネラル感がある」
という。とまあ、こんな具合だが、クレマンの人気のほどがわかる。そもそもクレマンの名の由来は、
「泡が半分取り除かれたシャンパーニュ」
であって、19世紀にまでさかのぼる。クレマン自体の意味は、「クリーム状の」みたいな意味。そのクレマンは、ワインの銘醸地でつくられているのであるが、意外やそのカゲに隠れがち。知名度も低く、比較的安価で手に入る。1975年、AOCを取得している。

そんななかでも、よく知られているのがアルザス産。白い花の香りや、さわやかな果実といった「クレマン・ダルザス」である。凝縮して、ふくよか、そして非常に広がりがあるスパークリング・ワインだ。その一方で、気泡は繊細で、丸みのあるやわらかさをも備えているのだ。

また、ロワール地方では、「ソミュール」と、「ヴヴレイ」がある。果実味がこころよく、軽やかな味わいが特徴。シュナン・ブランなどから、シャンパーニュ方式でつくられるヴァン・ムスーで、スティル・ワインと同じようにAOC。そのほかの産地では、ラングドッグの「リムー」、ローヌの「ディ」、そしてジュラも、またおすすめ。

クレマンにも、もちろん規定がある。手摘み、ブドウの運搬方法、搾汁量の制限など、それに、瓶詰の時期、瓶内二次醗酵、澱引きの時期など。また、ブドウの重さ当たりの果汁量、ラベル表示、AOC授与のための試飲の必要性といったものだ。ちなみに、アルコール度数は11.5%と定められており、比較的低い。

そんななかでも、見て飲んで驚かされる赤いスパークリングがある。「ラングロワ・シャトー・ラングロワ・ヴァンムスー・キュヴェ・カルマン」が、それだ。グラスのなかで立ちのぼる赤い泡の鮮やかさには、おどろきすらおぼえる。

「キュヴェ・カルマン」と名づけられたこのスパークリングは、しっかりと赤ワインの風味を残した辛口。品種は、ロワールの代表的品種カベルネ・フラン種。赤特有のタンニンを感じる口当たりにインパクトがあり、果実味と、泡が感じさせるフレッシュ感とが、絶妙のバランスを保っている。

シャトー・ラングロワは、1885年の設立以来、その安定した酒質は高く評価されている。あのシャンパーニュ地方で最高の評価を受けている超名門・ボランジェの1973年以来、傘下にある。

コスト・パフォーマンスに優れたクレマンのつくり手として定評があり、スティル・ワインのヴァラエティさも、ロワール屈指。そのほとんどは、広さ65ヘクタール以上もある自社畑産からつくられ、栽培から醸造まで、一貫した品質管理のもとに生み出されている。

白と、ロゼしか「クレマン・ド・ロワール」と呼び名がつけれないため、ヴァン・ムスーの規格になってはいるが、シャンパンと同じように、瓶内二次発酵のメソード・トラディショナルと本格的。

もう一つ、ドメーヌ・ランドロンは、ミュスカデの生産者。ランドロン家は数世代にわたってブドウ栽培を続けており、現在は、「テロワール狂」ともいえるランドロン兄弟が経営。ワインに豊かなミネラルを与えるために、密植度 7000本/haという畑を耕し、収量を抑え、補糖もせず、酵母添加もしない。

「ランドロン・ヴァン・ムスー・アトモスフェール・ジョ・ランドロン」は、コニャックに使われるフォル・ブランシュという品種と、ピノ・ノワールをブレンドしてつくられる。そして特筆すべきは、ヴァン・ムスーにもかかわらず、瓶内熟成5年ということ。

さわやかで、極辛口のフルーティなスパークリングだが、この「瓶内熟成5年」が、このスパークリングにとてもエレガントなキャラクターと、上品なコクを与えている。ミシェル・トルメー氏によるラベルも、おしゃれ。

※ 再投稿です。



♪「わが恋の終わらざるごとく、この曲も終わらざるべし」(映画・「未完成交響曲」) ♪

シューベルト/ピアノソナタ; 内田光子で聴く。

シューベルトは、歌曲だけでも634曲書いた。上記交響曲の管弦楽などをふくめると、882曲も作曲した。31年という短い生涯のなかで、この多作ぶりにはおどろかされる。

それにもまして、モーツァルトとちがって、子供時代の習作曲が残っていない。実質、17歳からの作品しか残っていないのだ。そして、それらの音楽はどれも美しく、胸がいっぱいになる。当時アカデミックなジャンルであったピアノソナタの作曲は、意外や1815年と遅く、それも未完に終わっている。

しかし、幻想曲である「さすらい人幻想曲」を機に、ピアノソナタの新しい世界をひらいた。それ以後、自信をえたかれのピアノソナタは、中断されることなく、そのほとんどは大作ぞろい。

絶妙な音色のコントロールから生み出される響きのデリケートな変化と、余韻の美しさ。そんな美しさと、はかなさを合わせもった音楽。シューベルト特有のピアニズムを、彼女ほど徹底的に追求したピアニストはいない。

シューベルトのピアノソナタは、番号付きのものは21曲が残されている。が、そのなかには書きかけのままに捨てられた断章だけの曲も含まれている。完成されたソナタのなかでも、とりとめがなくメロディーの魅力にも欠け、たよりなく思える作品もいくつか見られる。

なかでは、この第16番イ短調は、作曲家の生前当時も受け入れられた曲といわれているだけに、旋律的な魅力。ちなみに、同じイ短調ソナタでは、第14番も捨てがたい魅力。